マスク1枚36円 「価格破壊」が過熱 埼玉・西川口を歩く

マスク1枚36円 「価格破壊」が過熱 埼玉・西川口を歩く
マスク1枚36円 「価格破壊」が過熱 埼玉・西川口を歩く
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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大手のドラッグストアや量販店ではマスクの品薄状態が続く。だが、そんな状況もどこ吹く風とばかりに、一部の地域では安価なマスクが大量に店頭に並ぶ奇妙な現象が起きている。税込みで1枚当たり36円という仰天価格の店があるかと思えば、なんと「無料配布」まで…。マスク商戦が過熱する埼玉県川口市のJR西川口駅周辺を歩いた。

 西川口駅周辺は中国人を中心に多くの外国人が居住する地域だ。中国料理店や珍しいアジアの食材を並べた専門店がひしめき、そぞろ歩きをするだけで、ちょっとした異国情緒を味わうことができる。

 そんな西川口の街が最近、JR新大久保駅(東京都新宿区)周辺などと並ぶ首都圏屈指の「マスク安売りエリア」として注目を集めている。

 12日午後、西川口駅から数百メートル離れた中国系食料品店では、50枚セットのマスクが税込み1800円(1枚当たり36円)で並んでいた。今月5日にこの店を訪れた際は、同じ50枚セットの価格は2千円だった。わずか1週間で200円も値下がりしたことに驚く。

 近隣を歩くと、別の中国料理店などでも、50枚セットが税込み2500円(同50円)や2480円(同49・6円)で売られている。近くの大手量販店での10枚セットの販売価格が税込み657円(同65・7円)だったことを考えると、いずれも格段に安い。

 複数の店では、1人1枚限定で「ご自由にどうぞ」と促す貼り紙もあった。ある店で「もらってもいいものなのか」と尋ねると、女性店員が黙って箱を開けてマスクを差し出してきた。

 ちまたの品薄状態が別世界の出来事のように思えてくるが、そもそも、なぜ局地的にマスクの「価格破壊」が進んでいるのか。

 関係者によると、西川口で売られている安価なマスクの多くは中国製で、料理店などの「本業」の仕入れルートを持つ業者たちが、そのパイプを使って輸入しているという。4月末から中国製マスクを扱い始めた店の男性店員は「中国にはたくさんマスクがあるのでオーナーが買いつけてきた」と明かす。

 なるほど、マスクの安売り競争は、中国との結びつきが深い西川口の街ならではの現象というわけだ。

 値崩れは5月に入ったころから加速しているといい、男性店員が働く店のオーナーは「売り始めるのが遅かった」と悔やんでいるそうだ。日本政府が配布する布製マスクが全国に行き渡るより先に、西川口のマスク市場は飽和状態に突入しつつある。(内田優作)

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