コロナ危機でトヨタ変革急務 「モビリティー」再定義も

オンラインで決算会見に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長=12日午後(提供写真)
オンラインで決算会見に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長=12日午後(提供写真)

 新型コロナウイルスは、世界に冠たる企業であるトヨタ自動車にもいや応なく牙をむいた。トヨタは12日の決算発表で、令和3年3月期の大幅な減収減益をあえて予想した。同時に、逆風下の営業黒字予想も示し、王者の風格も見せた。だが、コロナの収束時期や、その後の社会は不確定要素に満ちている。「移動」を軸に新たな生活を提供する「モビリティーカンパニー」へのビジネスモデル変革を進めてきたトヨタは、思い切ったギアチェンジも必要になりそうだ。(今村義丈)

 「新しいトヨタに生まれ変われるスタートポイントに立った決算」。新型コロナの影響で、2年3月期は営業ベースでは減収減益、今期予測は販売台数が1割超減との厳しい状況のなか、豊田章男社長は会見で語気を強めた。

 2年3月期の連結営業利益は新型コロナによって、世界的販売減で1000億円、リースなどの金融事業の引当金増で600億円が下押しされた。一方で、地道に継続してきたコスト削減や合理化の努力で2千億円以上押し上げた。最大の下押し要因は3050億円の為替影響という。

 リーマン・ショックや東日本大震災といった危機を経て継続してきたこうした努力の自信もあってか、今期は1兆円以上の研究開発費を投入しても、5千億円の営業黒字を見込めるとした。

 ただ、その前提には、販売台数が6月までで前年同期の6割、9月で8割、12月には9割に回復する-との見積もりがある。確かに欧州では4月下旬に、米国では今月11日に、それぞれ稼働が再開され、4月の中国販売は前年を超えた。だが感染の第2波が起きれば、シナリオは崩れる。

 実際、新型コロナのリスクを見据え、トヨタは今春、金融機関から新たに1兆2500億円を借り入れるなど、守りも固める。

 新型コロナで戦略の見直しも迫られそうだ。トヨタは近年、自動運転や電動化といった次世代技術を駆使した「モビリティーカンパニー」を標榜。単に車をつくって売る従来型のビジネスモデルを変革する理念だ。

 ただ、感染防止でその理念の軸である「移動」が制限され、テレビ会議や在宅勤務の有用性も見直されるなか、利用者の価値観がどう変化するか見通せなくなった。豊田氏は、自身も「移動時間が80%減った一方、テレビ電話で頻繁に外部と連絡するようになった」と明かす。

 コロナ危機がリーマン時より「マグニチュードは大きい」と分析する豊田氏。「新しいトヨタ」の再定義が求められている。

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