【ロンドン=板東和正】英国のジョンソン首相は10日、テレビ演説を行い、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために3月23日から開始した外出制限の緩和計画を発表した。計画では、7月までにサービス業を再開させる目標などを示したが、新型コロナによる死者数が欧州最多となる中での緩和を不安視する声もある。
ジョンソン氏は、3段階で外出制限を緩和する方針を明らかにした。
まず、第1段階として、自宅で仕事ができない建設業や製造業などの労働者を対象に公共交通機関を極力使わないよう求めた上で、今月11日以降の業務再開を奨励した。13日からは「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」をとることを条件に、1日1回に限定していた市民の運動目的の外出を無制限で認める。
第2段階で、早ければ6月までに生活必需品以外の小売店や小学校の再開を目指す。第3段階で7月までに飲食店や宿泊などのサービス業を再開させる目標を据えた。外出制限下では、必需品に関係がない衣料品店や家電用品店、飲食店などの商店や施設に加え、英全土のほとんどの学校が閉鎖されている。
ジョンソン氏は10日、「新型コロナへの警戒を続け、ウイルスを制御しなければならない」と国民に呼びかけ、感染が再び拡大した場合は計画を進めないと強調した。新型コロナの1人の感染者が何人に感染を広げるかを示す数値「実効再生産数」の減少が計画を進める条件になるという。
英政府によると、現在の実効再生産数は1未満で、3前後あった3月時点から減少した。一時は1日の感染者数が6千人を超えることもあったが、ここ最近は4千人前後に抑えられる日が多くなっている。ただ、新型コロナの死者数は3万1千人以上と欧州最多を記録しており、緩和によって感染拡大の「第2波」が起これば、さらなる犠牲者が出ることが懸念されている。
英スカイニューズ・テレビの取材に応じた教育関係者は、「英国での新型コロナの感染率は学校を再開するにはまだ高すぎる」とした上で、ジョンソン氏の計画を「無謀」と非難した。