100年の森 明治神宮物語

記憶(2)都心で湧き続ける「清正井」

 「どのように話が広がったのか分からないのですが、井戸の水でお金を洗ったり、ハンカチを浸したりする人もいました」(沖沢さん)

 井戸の近くに警備員が立ち、掲示板で注意するなどして、こうした行為は遠慮してもらったという。明治神宮は「境内で最も大事で神聖な場所は本殿」としている。

 ◆水源は「鎮守の森」

 「井戸の中の枯れ葉を除いたり、大雨で泥水が入って濁ったときに中をきれいにしたりしています」

 現在の林苑主幹の松井正さん(63)は、清正井の手入れについてそう話す。こんこんと湧き続ける都心の井戸。沖沢さんは「昔の大名屋敷には多かった湧水が、都市化や宅地化によって次々と消えていった」と歴史を振り返った上で、「清正井が今でも湧いているのは、ここを鎮守の森にしたことで水源がはぐくまれ、ずっと水を供給し続けているからだと思います」と語る。

 御苑は現在、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、臨時閉鎖されている。明治神宮によると、「大雪などの後に倒木の恐れで数日非公開にしたことはあったが、これほど長期間にわたって閉鎖されたのは初めてでは」という。

 ただ、「もともと歩く場所は限定されているので、お庭の様子に特に変わりはありません。人が入らないので、沿道に生えた雑草を手入れするぐらいですね」と松井さん。清正井は今日も水をたたえ、自然の営みは御苑で続いているが、参拝者の目に触れることはない。

会員限定記事会員サービス詳細