スポーツ茶論

コロナ克服で見える一筋の光 黒沢潤

韓国プロ野球の取材の一コマ。選手とメディアはマスクをつけ、ソーシャル・ディスタンスが保たれている
韓国プロ野球の取材の一コマ。選手とメディアはマスクをつけ、ソーシャル・ディスタンスが保たれている

まさか、と耳を疑った。韓国野球委員会(KBO)がついに、新型コロナウイルスの感染拡大のため中断していたプロ野球の公式戦をスタートさせるというのだ。当面無観客ながら、各チームが年に144試合戦う見通しという。

日本がコロナウイルスの脅威に今もおびえるのを尻目に、韓国がコロナ制圧にほぼ成功し、野球界が息を吹き返すとは…。日本のプロ野球界に強烈なライバル意識を燃やす韓国の野球ファンはさぞ留飲を下げていることだろう。

彼らには忘れられない日本人選手の言葉があると聞く。「向こう30年、日本には手が出ないと相手に思わせたい」。2006年、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の際、イチローが放った言葉だ。特定の国の名前を挙げたわけではなかったが、韓国社会は「日本に見下された」と解釈、騒然となった。

1次、2次リーグで日本は韓国に敗れ、球場の観客席には「30年間、韓国に手を出せないのは日本だ」「イチローは30年と言ったが、日本を下すのに1週間あれば十分だ」といったプラカードが乱立した。20世紀前半、日本の植民地支配を経験した歴史、怨念もその背景にあったろう。

慰安婦問題、徴用工問題、韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射問題…。ここ数年、日韓の分断・亀裂は目を覆うほどだ。かつて、サッカー・ワールドカップ(W杯)を苦労しながらも共催した間柄とは思えぬほどの惨状が両国間に横たわっている。

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4年ほど前の米ニューヨーク・マンハッタンの国連本部には、そうした惨状とは正反対の光景があった。イースト・リバーを望むこの美しい白い建物の中で、日本政府代表部と韓国政府代表部の外交官が穏やかな表情で言葉を交わしていたのだ。両国政府が慰安婦問題などをめぐって激しく対立し、不穏な空気に包まれていたさなかのことだ。

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