政府の対策本部が新型コロナウイルスの感染状況をにらみ、全都道府県を対象に緊急事態宣言の期間を31日まで延長することを決めた。
安倍晋三首相は記者会見で「5月は現在の流行を収束させ、(医療態勢強化などで)次なる流行に備える1カ月である」と述べ、国民に協力を呼びかけた。治療効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」について、5月中の薬事承認を目指していると明らかにした。
新規感染者数は減少傾向にあるが宣言を一気に解除して感染拡大前の暮らし、働き方に戻ればウイルス抑え込みは難しい。延長はやむを得ない。解除に向け国を挙げて取り組みたい。
東京や大阪など13の特定警戒都道府県では「人との接触8割削減」が必要として外出自粛や休業の要請を続ける。その他の34県には感染防止策を講じつつ、社会経済活動再開の道を開く。34県は日本の総人口の4割弱を占める。活動再開へ政府と県は密接に連携してほしい。
首相が14日をめどに感染動向や医療態勢を地域ごとに分析する専門家会議を開き、宣言解除があり得るとしたのは希望が持てる。
「特定警戒」地域である大阪府の吉村洋文知事は府内の病床使用率や陽性率などを踏まえ、外出・休業の自粛要請の緩和を判断する姿勢を示していた。
感染症対策と社会経済活動の両立を図るモデルケースになるかもしれない。政府は大阪府を後押ししたらどうか。
政府の専門家会議は、人との間隔を極力2メートルとるなど「新しい生活様式」を呼びかけた。
国民に協力を求める一方で政府の説明が十分でなかった点は残念だ。首相は新規感染者数に関し、1日100人超の人が回復しているとして「その水準を下回るレベルまで減らす必要がある」と語った。ただ、それ以上の具体的な解除の条件は示さなかった。
手探りで対策を進めているのは分かるが「民は由(よ)らしむべし、知らしむべからず」のようになっては国民の自発的協力が得られにくくならないか。
説明責任を果たすことは、PCR検査拡充や宿泊施設整備など医療態勢の充実、経済対策、教育などと並ぶ重要課題である。政府はそれを自覚し、ウイルスとの戦いを進めるべきだ。