「努力で追いつくのが日本人」 武田薬品、湘南アイパークと光工場のこれから

 世界で今、最も注目を集める創薬エコシステムは、武田も研究拠点を置く米ボストンにある。ノバルティスやメルクといった巨大製薬企業や創薬ベンチャーが研究所を置き、近郊にはマサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学のキャンパスもある。優秀な人材が集まり、投資会社が起業や事業を後押しする流れもできている。

 米国にはこのほかフィラデルフィアやサンフランシスコ、サンディエゴなどに創薬エコシステムが構築され、1社で創薬するには時間も投資も莫大(ばくだい)にかかる画期的な新薬の開発が、協業によって進む。

 現在、アイパーク内の武田の研究所でドラッグディスカバリーケミストリー研究所長を務める一川隆史さんは、平成17年に武田が買収した米バイオ・ベンチャー、シリックスを母体とするサンディエゴの研究拠点で一時期、研究に携わっていた。

 赴任当日、シリックスの前社長から武田の現地法人社長に転じた起業家に出会ったときのことが忘れられない。ランチに誘われ、気軽に来歴や自分の人脈について話してくれた。「誰とも平等に接して、オープンに話す。こういう立ち位置でリーダーシップを発揮するのがベンチャーの起業家なんだ」と驚いた。サンディエゴの街を歩けば、会社の枠を超えて業界のトレンドや他社が取り組む新規事業の話、研究員の募集といった話が飛び込んできた。

 一川さんは今、アイパークで新規入居者を訪ね、相談に乗る役割も担う。「サンディエゴでは、国籍、文化、宗教…さまざまな背景を持った人たちがミックスして異なる考え方や方法論でアプローチすることで、新しいアイデアが生まれていました。アイパークでも実現できれば」

 武田は今春、アイパークの土地建物の所有権を信託先に譲渡することを発表した。今後は所有者ではなく他の入居企業や団体と同じ立場で湘南アイパークの発展に尽くすという。