「努力で追いつくのが日本人」 武田薬品、湘南アイパークと光工場のこれから

 「どのグローバル化の手法が良い、悪いという判断はしません。ただ、私たちの業界で勝つためにはこういう形が必要なのです。薬は、世界のどこであろうとも同じ形で届けられます。何より新しい薬を生む科学の革新自体が国際的なネットワーク、競争の中で生まれているからです」

異例の創薬拠点開放

 武田は平成30年、神奈川県藤沢市にある国内唯一の創薬研究所の空きスペースや研究に使う機器を他企業や機関に貸し出す事業をスタートさせた。その旧湘南研究所、「湘南ヘルスイノベーションパーク(通称、湘南アイパーク)」の約22万平方メートルの広大な敷地には、地上10階建ての建物が5棟そびえる。建物の半分弱に武田の研究所が入り、残りのテナントに約70の企業や団体が入居する。

 武田が1470億円を投じて湘南研究所を建てたのは23年。大阪の十三研究所とつくば研究所を統合した武田の新時代の研究拠点としてお披露目された。

 だが、そのわずか5年後に、武田は研究拠点を米ボストンに集約すると発表。異動する人や会社を離れる人もいて一時期、湘南の研究員の数は激減した。「湘南はゴーストタウンになっている」。他の製薬企業からは、こう冷やかされた時期もあった。

 「確かにとても大きな研究施設で、活用にはリスクもありました」とウェバー社長は話す。本来、新薬候補を生み出す研究部門は製薬企業にとって最も情報の扱いが慎重になる部門。その開放は異例だった。しかし、田辺三菱製薬や国内初の遺伝子治療薬を開発したアンジェスなど製薬企業のほか、次世代医療を見据えて研究を進めるキリンホールディングスやIBMなど多様な業種が入居する。「今は活気も出て、新しい日本の創薬拠点として有望です」

ボストンの一大創薬拠点がお手本

 開所から2年、すでに入居者間での連携は30件以上に上った。昨夏から入居する田辺三菱製薬の林義治創薬本部長は「他の入居者とコミュニケーションを図る中で共同研究者を得たり、提携したりして研究を加速させることができる」と期待する。湘南鎌倉総合病院や国立がん研究センターも名を連ねており、「創薬には患者さんの声が欠かせない。医療現場との連携も期待できる」とも話す。

 アイパークが目指すのは、産官学の連携によって新薬開発を進める「創薬エコシステム(生態系)」と呼ばれる拠点づくりだ。