安倍政権考

社会部出身の総理番が感じた首相との距離感

 「総理番への対応は時の総理によって異なる」と広報歴の長い幹部は話す。建て替え前の旧首相官邸時代は執務室まで出入り自由で、出入りする首相を囲んで質問し、ドアに耳を近づけて室内の声を聞こうとする「壁耳」まで行われることがあったという。

 小渕恵三首相(在職期間平成10年7月~12年4月)は突然、「じゃあ、懇談しようか」と言って記者を喫煙室に招き入れた。立ち止まっての「ぶら下がり取材」に応じたのは小泉純一郎首相(同13年4月~18年9月)だ。1日2回、テレビカメラの前で短く発言する形を始め、「ワンフレーズポリティクス」と呼ばれた。この習慣は次の第1次安倍政権でも続けられたが、民主党政権下で途絶えた。

 現在の安倍首相は、総理番の質問要請に応じないときは、総理番が声をかけても「ご苦労さまです」などと応えるだけで去ってしまう。要請に応じる場合も最後に一方的に「ありがとうございました」と言って立ち去ることもある。「総理、総理」と引き留めて質問を重ねる記者もいるが、そもそも質問を歓迎する雰囲気ではないように感じている。

 日本で最も多忙な1人には違いない。だが、自らを追う「番記者」に、「何かありますか」と問いかけるくらいの余裕を見せてもいいのではないか。

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