武田薬品 6・2兆円の買収劇、コードネームは「Yamazaki」「Hibiki」

 平成30年3月末、取締役会は買収の方針を決定した。検討を始めてからわずか半年ほどでの大きな決断。他の製薬企業もシャイアーに興味を持っており、経営陣には迅速な判断が求められていた。

 対話を尊重した経営を目指すウェバー社長には、重要視していることがある。それは「常にお互いを尊敬し合うこと」だ。「たとえ意見が対立しても尊敬し合った上で議論することが重要」と語る。「一人でも謙虚さを失ったり、エゴをむき出しにしたりしてはチームが成立しない。尊敬し合い、協力することが必要。一度意思決定がされれば、反対の意見でも一丸となってサポートする」。それが多様な背景を持つメンバーの個性を生かし、チームを運営する極意だと考えている。

買収重ねた15年

 31年1月15日、米ニューヨーク、ウォール街の中心、威圧感あるニューヨーク証券取引所の正面に武田の真っ赤なロゴを映した旗が掲げられた。シャイアーの買収から1週間後となるこの日、武田は同証券取引所への上場セレモニーを行った。

 「カンパイ!」

 祝賀会で、乾杯の音頭を任された岩崎真人取締役の脳裏には武田が初めて創薬企業を買収した約15年前のことが浮かんだ。バイオベンチャー、米シリックスを買収したのを皮切りに、その後、武田は海外企業の買収を進めた。岩崎も20年に買収した米ミレニアムの企業統合のリーダーを任され、シカゴにオフィスを開いたが、チーム作りに苦労した。「買収に関する経験はまだ少なかった。知らないということはすごく大変だった」。計画を立てる段階から綿密にやろうとする日本側と、まずは実践して修正しながら進めようとする米国側。議論もかみ合わなかった。

 ただ、その後、武田は買収を重ね、統合ノウハウを身に付けた。シャイアー買収はその集大成になる。

 「武田はもうグローバル化していく会社ではない。高度に統合されたグローバル化した会社なんだ」

 世界経済の中心で、グラスを傾けながら岩崎は「短いようで長かった15年間」に思いをはせた。

成長鈍化する日本

 この十数年間、武田がグローバル化を急いだ理由に、日本の医薬品市場の成長鈍化が関係している。現在、世界の医薬品市場の中で日本は米国、中国に次いで3位と重要な位置を占める。しかし、成長率は薬価抑制の政策やジェネリック医薬品(後発薬)の浸透で鈍り、米の調査会社IQVIAは日本の26年から30年までの5年間の成長率を年平均1%とする。先進10カ国の中で最低だった。