目的は威圧?恫喝?米で規制進む「スラップ訴訟」日本でも

 訴訟先進国の米国で生まれた概念で、「Strategic Lawsuit Against Public Participation」の頭文字をとり「SLAPP(スラップ)」と名付けられた。直訳すると「市民参加を妨害するための戦略的民事訴訟」との意味だ。名付け親の米国の大学教授は、「民事訴訟の形を取る」「原告が大企業や政府、被告が個人や民間団体」など、大きく4つの基準を示す。

 日本国内でも、ジャーナリストが書いた記事で名誉を傷つけられたとして、大企業などが起こした訴訟が、結果的にスラップ訴訟だと指摘されるケースが出ている。

「救済法の整備を」

 岡山大教授で弁護士の吉野夏己氏によると、日本には1990年代頃からスラップ訴訟の概念が入ってきたとされる。近年は「当事者が気づいていないだけで、実はスラップという訴訟は多い」という。

 ただ米国では、複数州がスラップによる提訴を防ぐ法律を制定している。スラップ訴訟が憲法で保障される表現の自由を侵害するものとして問題視されたためだ。訴えを起こした原告が正当性を立証できなければ訴訟が打ち切られるほか、訴訟に州政府が参加して被告を支援することもあり、州ごとに多様な支援策がある。

 だが日本では状況が異なる。憲法では裁判を受ける権利が保障されており、裁判所は起こされた訴訟を進めるのが原則だ。また、正当な訴えとスラップ訴訟を区別するのも難しい側面がある。

 吉野氏は、現状では「裁判を早く終わらせるしかスラップ訴訟への対策が存在しない」と指摘。その上で「裁判官はスラップと判断したら訴訟を早期終結させ、訴えられた側の負担を減らすべきだ」とし、「日本も米国にならい、独自の被害救済法を整備する必要がある」と主張した。

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