目的は威圧?恫喝?米で規制進む「スラップ訴訟」日本でも

 大企業などが民事訴訟を利用し、不都合な言論を封じる-。勝つ見込みもないのに、自身を批判した相手に威圧目的で起こす「スラップ訴訟」と呼ばれる訴訟がある。その性格から恫喝(どうかつ)訴訟とも称され、求める賠償金が法外に高額なケースも。米国では言論の自由に反するとして抑止する州もあるが、日本での法規制は存在しない。提訴された側の負担の大きさなどから、日本でも救済制度を求める声も上がっている。(桑村朋)

「強い立場」の本部、元オーナー提訴

 目の前の争いがスラップ訴訟なのかどうかは、一般的に当事者間で認識に差がある。

 「最初は腹立たしかったが、今は営業を再開させてほしいだけ」。こう訴えるのは時短営業で話題となったセブン-イレブン東大阪南上小阪店(大阪府東大阪市)の元オーナー、松本実敏さん(58)。クレームの多さを理由に契約解除したのは不当だとして、セブン本部を大阪地裁に提訴後、記者会見で胸の内を明かした。

 本部側は昨年12月31日付でフランチャイズ契約を解除。松本さんは今年1月、オーナーとしての地位確認を求める仮処分を申請したが、これに対抗するように本部側は、店舗の明け渡しなどを求める仮処分や訴訟を起こしている。

 会見に同席した壇俊光代理人弁護士は「クレームの多さは口実に過ぎず、時短営業の中心人物を排除する目的でしかない」と強調。その上で「オーナーより強い立場の本部によるスラップ訴訟だ」と断言する。

 セブン側は取材に「訴訟中の案件であり、こちらから申し上げることはない」としている。

米国発祥の概念

 いわれのない訴訟に付き合わされて疲弊し、やがて相手への批判や意見が面倒くさくなる。こうした弱みにつけこむのが、一般的なスラップ訴訟の特徴だ。威圧を目的としているため、仮に敗訴したとしても、相手への嫌がらせは十分達成できる。

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