一服どうぞ

手を差し伸べ合うときだ 裏千家前家元・千玄室

今回、WHO(世界保健機関)による新型コロナウイルス感染のパンデミック宣言を受け、各国が感染予防のためと出入国禁止の措置を取り、ほとんどの国が閉鎖状態となっている。経済的恐慌が起こりつつある様相を呈している。しかし、全てをコロナウイルスのせいにしてしまうことには疑問も感じる。このような時こそ冷静な対応が必要になり、われわれは今一度、根本的に生活のありようを顧みるべきであろう。

藤原家隆に「花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春をみせばや」という和歌がある。茶の湯での「わび」をあらわす。今年の春の訪れは、世の中の混乱などわれ関せずの如(ごと)く早かったが、この歌では梅だ桜だと派手なものに注目して春を待つのではなく、足下のそっと咲く春を知ってほしいと家隆は詠じたのである。何ができない、これもできないと嘆くのではなく、しっかりと自分の立ち位置を見つめ直してほしいと思う。

ウイルスが全世界を網羅している今、お互いに手を差し伸べ合っている報道に触れると、人種や宗教の枠を超えた人間の素晴らしさを実感する。このような時こそお互いの知恵と能力を発揮し努力していくべきで、手を差し伸べ合うときであろう。そういう思いが天に通じて収束に向かってくれれば幸いなことと思う。(せん げんしつ)

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