一服どうぞ

手を差し伸べ合うときだ 裏千家前家元・千玄室

本日私は97歳の誕生日を迎え、後3年で百歳ということになる。今は人生百年時代といわれているようだが、わが家の歴史を見ても80歳まで生きられたのは三代の宗旦居士だけで、先代も71歳で亡くなり、歴代の多くは50代から60代で亡くなっておられる。今の50代や60代の方々はまだまだ現役で活躍なさる方が大半だが、当時は既に老境の域だったと思われる。日々の医学の素晴らしい進歩、そして生活における公衆衛生や栄養摂取の知識が上がり寿命が延びてきたのである。単に生きているということではなく、元気に長寿を保つ世の中になっているのはありがたいことだ。

毎年この日には西宮神社で献茶式を奉仕させていただいているが、本年はそれも中止となってしまった。感染を防ぐために人が集まるのを避ける処置であり致し方ないことである。古今より色々な試練が有り、それを生き抜いての今があるのだ。

1800年代、英国ではコレラの流行が頻発していた。細菌やウイルスの概念がまだなかった当時、ジョン・スノウという医師が独自で地道にコレラのはやりやすい地域をチェックし、罹患(りかん)者が共通の井戸を使用していることを突き止め、使用禁止を提言したところ、改善につながったそうだ。それ以降も水が原因ではないかとテムズ川の水を下水で汚さないような方策をとっていったとの話を聞いた。

情報伝達に時間がかかったその時代とは格段の差で情報が世界中を駆け巡っているが、同時に病原体もすごい早さで世界に広がってしまっている。どんな場合であろうと、医師や研究者、関係者が真摯(しんし)に事実と向き合い日々努力しておられるのは変わらぬことだと思う。

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