新型コロナウイルスの感染が拡大する欧米諸国を中心に、「マスク争奪戦」が起きている。各国による着用呼びかけ強化でマスク不足に拍車がかかる中、最多の感染者を抱える米国がマスクを買い占めているとの批判も出ている。
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欧米では日本ほど一般の人がマスクを着用する習慣はない。米疾病対策センター(CDC)も従来、感染の拡大防止には効果がないとしてきた。
ところが、トランプ米政権は3日、これを軌道修正。新型コロナの感染拡大を阻止するために国民にマスク着用を勧めると発表した。無症状の感染者からウイルスが広がっている可能性が高いとの見方が強まったためだった。
同じ日、朝鮮戦争中の1950年に制定され、民間企業に物資の調達などを促すことができる「国防生産法」に基づき、マスクなどの不当な輸出停止を命じた。
これを受けて米複合企業スリーエム(3M)は声明で、米政府が、同社の製造する高機能マスクについて、カナダや中南米諸国への輸出差し止めを要求したとし、「重大な人道上の問題がある」と訴えた。
米紙ワシントン・ポストによると、カナダのトルドー首相も「重要な物資やサービスの往来を止めたり削減するのは間違っている」と強い反発を見せた。
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マスク確保をめぐっては、激しい争奪戦がうかがえる事例も起きた。
ドイツの首都ベルリン市が市警察用に発注した20万枚のマスクが、タイ・バンコクの空港で奪われたと発表。中国の工場で製造されてバンコク経由で空輸されるはずだったが急遽(きゅうきょ)米国に行き先を変更されたといい、市当局は米国が関与しているとして「現代の海賊行為」と非難した。