政府、大型連休移動を警戒、崩れかねない収束シナリオ 緊急事態宣言全国拡大 

 政府が改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大させたのは、5月の大型連休(ゴールデンウイーク)に都市部から地方に人が移動することなどで起き得る、全国への新型コロナウイルスの拡散を防ぐ狙いがある。「全都道府県を指定」という強いメッセージを発信することで、国民の間で引き締めを図りたいとの考えもありそうだ。(坂井広志、小川真由美)

 「先週から考えていた。大型連休になると多くの国民の間で自粛疲れが出るかもしれない。対象区域を早めに全国にして地方に行かないようにしておく必要がある」

 安倍晋三首相は16日、周囲にこう語った。大型連休対策は政府の最大の懸案事項といってよい。全都道府県への指定は、クラスター(感染者集団)とクラスターがつながることで起きる爆発的な感染を阻止するための切り札といえる。

 7都府県以外の人が旅行で全国各地を訪れる可能性は決して低くない。首都圏の人が地方に帰省するのを自制する確証もない。7都府県以外でもクラスターが相次いで発生している事態も踏まえ、政府は全都道府県を対象に指定する必要があると判断した。

 厚生労働省のクラスター対策班メンバーで北海道大の西浦博教授(理論疫学)の試算に基づき、政府の基本的対処方針では人と人との接触機会の低減目標を「最低7割、極力8割」と定めている。

 ところが、内閣官房がホームページで公表しているNTTドコモの統計情報「モバイル空間統計」の分析レポートによると、7都府県の主要駅周辺の人口を感染拡大以前(1月18日~2月14日の平日平均)と比べると、15日午後3時現在で4~7割の低減とばらつきがあり、自粛の動きが徹底されていない。

 このままでは、専門家らが想定している「接触機会を8割低減させて、1カ月程度で収束に向かわせる」というシナリオは崩れかねない。西浦氏は15日に行われた記者との意見交換会で「重大な局面に差し掛かっている。今のままの状況を続けるのはまずい」と危機感をあらわにした。

 政府方針を日本医師会(日医)は支持しており、日医幹部は「医療面からは、感染症対策は幅広く封じ込めるのが大事だ。治療薬やワクチンがない状況では接触を少なくし、感染する人を抑制するしか蔓延(まんえん)を防止できない」と語った。