主張

PCR検査 全力で強化し感染を防げ 不十分な態勢に猛省が必要だ

 新型コロナウイルスの感染が拡大している。政府は7都府県を対象に緊急事態宣言を発し、それに含まれなかった愛知県など複数の道県、政令市が独自に宣言を行っている。

 感染を収束させる重要なカギとなるのが、人々が外出をできるだけ控え、人との接触を8割減らすことだ。それには感染の有無を調べる検査の強化が欠かせない。

 検査で自分が陽性と判明すれば大部分の人はむやみに出歩かない。陽性者のうち症状が出ていなかったり、軽かったりした人は、自治体が借り上げたホテルなどの滞在施設で陰性が確認されるまで過ごしてもらう。

 ≪日本はなぜ少ないのか≫

 そうすれば、知らぬ間にウイルスを感染させないですむ。この感染症は症状が軽くても数時間のうちに悪化することもある。医師や看護師が待機している隔離用の宿泊施設にいれば速やかに入院することも可能だ。

 この検査と待機という当たり前の態勢が日本で十分に整っていない。信じがたいことである。

 安倍晋三首相は検査態勢拡充を何度も表明してきたが、実態が追い付いていない。医師が必要だと求めても都道府県、政令市が運営する保健所からPCR検査を断られることがある。厚生労働省の基準を満たした発熱者が相談窓口に電話してもなかなか通じない。検査にたどりつけない例がある。

 PCR検査には限界があり、偽陽性、偽陰性という誤った結果がどうしても出る。だからPCR検査を広く行わなくてもいいという意見が一部にあったが今となってはおかしな議論だ。

 本当は陽性なのに「偽陰性」の判定が出た人は外出してしまうが、検査なしでも外出する。ならば、医療崩壊をさせぬよう医師が必要と判断した人を対象に検査を進め、少しでも多くの陽性者を見つけるほうが感染の広がりを防げるのが道理である。

 政府や自治体はクラスター(感染者集団)や重症者を見つけるためにPCR検査を活用したが、それ以上の拡充には熱心でなかった。クラスター対策と並んで検査態勢も強化すべきだったのではないか。今の感染状況には検査態勢の不十分さも反映しているはずだ。猛省が必要である。

 さいたま市は誤解を招く発言としたが、同市の保健所長は10日、「病院があふれるのがいやで(検査対象の選定を)厳しめにやった」と述べていた。清水勇人市長は9日の会見で「(検査が)必ずしも十分でなく、増やしたい」と語っていた。政府や自治体が誤ったのは、検査件数をしぼったことと、検査で陽性となれば重症者も軽症者、無症状の人もすべて感染症指定病院に入れるような態勢を漫然と続けたことだ。

 指定病院の病床が埋まりそうになってようやくホテルなどの施設を用意し始めたのではないか。

 ≪地域は発熱外来設置を≫

 日本は今、1日約1万1千件超の検査能力がある。政府が7日に閣議決定した緊急経済対策で2万件へ増やすことを決めた。だが、実際の検査数は諸外国と比べ多くない。

 日本の検査数の少なさは内外から疑問視されてきた。在日米国大使館は3日、ウェブサイトで日本滞在中の米国人に帰国を呼びかけた。日本政府がウイルス検査を広範に行わないと決めたため感染状況の把握が困難になっているとし、「数週間後に(日本の)医療態勢がどのように機能しているかを予測することは難しい」と指摘した。同盟国による異例の不信の表明といえる。

 今、地域が自主性をもって取り組むべきは検査と陽性者の行き先を振り分ける外来態勢の拡充強化だ。一部で動きが出ているが、都道府県は地域の医療機関や医師会と協力し、病院の建物外や自治体の駐車場などに「発熱外来」を設けてほしい。地域の医師、看護師らが交代で詰める。医師が必要と判断すれば検査を行う。

 緊急事態宣言下で7都府県の知事は必要な医療行為を医師や看護師に要請・指示できる。今は力をふるうときだ。政府は感染防止用のマスク、ゴーグル、ガウンの優先支給に努めてもらいたい。

 日本企業はPCR検査よりも早く結果が出る検査キットを開発している。これらの活用も検討していくべきだ。

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