令和7(2025)年の大阪・関西万博開幕まであと5年。大阪府市が立ち上げた、地元パビリオンの内容を検討する有識者懇話会メンバーで、現役大学生と認知科学者という2つの顔を持つ佐久間洋司さん(23)は「万博で新しい生き方を提示したい」と意気込む。(小川原咲)
3月31日の有識者懇話会で地元パビリオンのテーマ案が示された。その1つが「REBORN(リボーン=生まれ変わる)」だ。佐久間さんは語る。
「輪廻(りんね)転生を信じるとしたら、それは『入る器』を選ぶということ。万博の会場は次の輪廻転生を実現する場であり、まさに新しい生き方を提示することにほかならない」
大阪大基礎工学部に在籍。VR(仮想現実)など最先端科学の力で人の意識に働きかけ、「共感」を呼び起こす研究に取り組んでいる。
これまで懇話会で、仮想と現実が融合したパビリオンを提案してきた。仮想空間に外見や声を自由にデザインした自分のキャラクター「アバター(分身)」を作り出し、自動翻訳を組み合わせれば言葉の壁を越えて交流できる-。「万博で『こうありたかった自分』を生きられたら面白い」という発想で、動画共有アプリなどで自身の容姿を加工することが当たり前の10~20代に刺さるかもしれない。
万博で打ち出すのは「全く新しい社会」といい、思い描く会場は「建物のロボット化」というから、興味深い。呼吸したり風に合わせて揺れたり、騒がしくなったら海のように青く波打って穏やかにさせ、静かになりすぎたら赤くなる。そうした「有機的」な建物をイメージしている。
佐久間さんは「会場全体が有機的に変化することで、そこを訪れた人の気持ちも協調性や思いやりが増すように変えてしまう」と思い描き、「自分が研究している技術によって、お互いをもっと理解できるようになった、あるいは、そうなるんじゃないかと思わせたい」と語る。
万博には各世代にわたる多くの人が来場する。佐久間さんは万博にかかわったり、出展したりすることについて「多くの人に技術やアイデアを見てもらえる絶好の機会。研究への賛同者を増やすチャンスも秘めている」と述べ、万博への期待感を示した。
さくま・ひろし 平成8年、東京都生まれ。大阪大基礎工学部4年で、人工知能(AI)やバーチャルリアリティー(VR)など最先端科学で人の「意識」に働きかけるシステムの研究開発に取り組む認知科学者。学生や若手研究者らでつくる日本最大級のAIコミュニティー「人工知能研究会/AIR」代表。