朝晴れエッセー

ファンレター・4月12日

ポストから取り出した手紙を見て夫がふざけて「今日もファンレター来てるよ」。

手紙を書くのは好きだがもらうのはもっと好きだ。書道の先生をやっている聡明(そうめい)な友達からいつも筆の達筆なくずし字のお便りをもらう。手書きに勝るものはない。サラサラといとも簡単に書くのだろう。「どう読める?」とまるで試されているようだ。

私も書道をやっているが、草書体よりもっとくずしてあり、全て読めたときはテストに合格した気分になる。文明の利器が発展してきて、連絡は携帯電話、手紙はメール、文章はパソコンと世の中から手書きの文字が消えてなくなりそうだ。

大昔北海道を代表する歌手にファンレターを書いたことがある。「ちゃんと読んでくれたかな」などと思いながら忘れた頃に返事がきた。たくさん届く中で本当に読んだかどうかは別として、お便りをもらったときはうれしかった。

今やSNSの普及でファンレターを書くことは少なくなってきたが、それでもわざわざ書くのはなんだか特別感がある。誰にも見られず規制されずに炎上することもなく、長い文で気持ちを伝えることができる。

紙に書くというレトロでアナログな行為は面倒くさいかもしれない。しかしその面倒くさくて時間がかかることは、時間がたっても色あせない。便利な時代だからこそ時代遅れのファンレターをまた書いてみたくなった。

永野意見子(66) 埼玉県草加市