新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府の緊急事態宣言が発令されてから初の週末を迎えた11日、東京都内の繁華街では大半の商業施設が営業を見合わせた。人通りが消え、静まりかえった街。「今は仕方がない」。人々は戸惑いながらも事態の好転を願った。
ブランドショップや百貨店が立ち並ぶ銀座。都が外出自粛要請を出した先月末は店舗がまだ営業していたが、この日はメインストリートの銀座通りに面した店はほとんどが休業。営業を続けているのはドラッグストアなどわずかで、閑散としていた。
散歩で訪れた東京都港区の主婦(79)は「こんなに人がいないのは初めて見た。外国人観光客もほとんどいなくなり、別の街になってしまったみたい」と驚いた様子だった。
若者でにぎわう渋谷も駅前のスクランブル交差点は人がまばら。センター街に立ち並ぶほとんどの店がシャッターを下ろし、電光掲示板から流れる音楽だけが響いた。通院のため毎週末、渋谷に来るという男性会社員(28)は「人の量は以前の2割くらい。週を追うごとに減っている」。営業を続けていたケバブ店の男性店主(38)は「最近と比べても今日は特に人がいない」と表情を曇らせた。
電気店やアニメ・ゲーム関連の店舗が集まる秋葉原も人影が少なく、店頭での掛け声やBGMはほとんど聞こえなかった。千代田区のJR秋葉原駅前で電気店を営む男性(48)は「緊急事態宣言が出てから閉まった店が多い。今は仕方がない」。ビルの窓ガラス清掃の仕事で来たという女性(24)は「先週はメイドの格好をした女性が呼び込みをしてたけれど、今日は一切見ない。まるで早朝みたい」と話した。
上野のアメ横商店街(台東区)もシャッターが下ろされたままの店が多く、人は少なかった。酒の肴(さかな)などを販売する「新谷商店」社長、新谷良雄さん(60)は「40年間店頭に立っているが、こんなに人の流れが切れるのを見たことがない」。食品の値段を原価近くまで下げて販売しているが「相手がいないからいくら安くしても売れない」と肩を落とした。
アメ横商店街連合会副会長の千葉速人さん(65)によると、約400店舗が軒を連ねるアメ横で現在、店を開いているのは半数以下。アメ横の利用客は、都の外出自粛要請があった3月には前年の同じ時期と比べて6~7割減となり、4月に入ってからは9割減ったという。
「世界的な感染拡大。国や都からの補償があれば協力したい」としつつも「お客さんが戻ってくるのには時間がかかるだろう」と不安を口にした。