朝晴れエッセー

見返りを求めぬ精神の美徳・4月10日

実家の母から「普段利用している生協のマスクの販売が、抽選になってしまった。今使っている箱マスクが無くなった後が心配。私は車椅子の身体だから、朝から薬局に並ぶことなどできないし…」と電話があった。

早速家の裁縫キットを確認したところ、数年前、娘の夏服のスカートの裏地にするつもりで買った白くて薄い綿の余りがあった。通気性も良く、布を重ねて縫ってみたら、手前味噌(みそ)だが良い感じの立体マスクが仕上がり、実家に届けたら母も喜んでくれた。

そのマスクを母が使うと思いきや、「自分は、まだ箱マスクの残りがあるから大丈夫。これは新聞の集金に来る人にあげたい」と言う。

聞くと、新聞の集金に来るスタッフさんは、あちこちのご家庭を回るゆえ、マスク着用が義務だそうなのだが、折からのマスク不足で入手できず大変困っているらしい。新聞配達所から「ネックウォーマーなどをマスク代わりにして訪問することにご理解願います」とお知らせが来たが、それでもきまり悪そうにしていたことが気の毒だった、だからこのマスクはそのスタッフさんにあげたい、と母は言う。

母の言葉を聞き、私の気持ちもほんのり温かくなった。

折しも新聞には、甲府市の女子中学生が自分のお年玉貯金をはたいてマスクを作り、県に寄付をした素敵な話が掲載されていた。最近見失われがちな、見返りを求めずに相手を思いやる精神の気高さに心が洗われた思いだ。

ジョシュクン涼子(49) さいたま市見沼区