朝晴れエッセー

「どういたしまして」・4月9日

ようやく書き終えた手紙を出しに、ポストまで行こうと玄関を出た。風の少し寒い土曜日の午後だった。

ポストまで、さほど遠くはないが、バス通りの横断歩道を渡らなければならない。

足が悪く、杖(つえ)を持つ高齢の身には、転ばないよう緊張の連続である。

ようやく渡り終え、ポストの前まで来たとき、一人の少年が向こうから走ってきた。

小学1、2年生くらいだろうか。片手に白い封筒を持っている。

ポストの前の少年、その後ろに私は立ち、手さげ袋に入れてきた手紙を取り出そうと身を屈めていたとき、少年が投(とう)函(かん)したであろう微かな音が聞こえた。

手さげから取り出した手紙を私も入れようと、顔を上げて驚いてしまった。

その少年は、ポストの横にぴったりと体を寄せ、無言のまま私をじーっと見ている。

一瞬えっと思ったが、目をこらすと、少年はポストの郵便差し入れ口を、小さな手で押さえ、手紙を入れ易(やす)いよう、開けていてくれたのだ。

何ということだろう。年端もゆかない、見知らぬ少年のこの思いやり、じーんと熱いものがこみ上げてきた。

「ご親切にありがとう」

「どういたしまして」

そのひと言を残し、少年は、さーっと走って行ってしまった。

小関 久子(91) 川崎市麻生区