朝晴れエッセー

ゆきちゃん・4月5日

3人の息子が皆自立して、わが家がこんなにも広かったのかと思う。

夫との2人の暮らしになって、分かっていたつもりでも、やっぱり淋しい。

そんなことを思いながら、いつもと変わらぬ夫の横顔を見ていたら、ふと、懐かしい思い出が蘇(よみがえ)ってきた。

小学校の入学式。1年6組になった私。引っ込み思案で、人見知りが激しく、人一倍ドキドキしていた。

先生が出席簿を読みあげ、私の番に。

「たけだゆうこさん」…エッ、私は「ひろこ」ですと、思わず心の中で叫んだとき、「先生、こいつの名前は、ひろこです」と幼なじみのゆきちゃんの声が聞こえた。

恥ずかしかったけれど、とっても嬉しかった。

通学路は、子供の足で片道1時間かかるような道のりも、あちこち寄り道して、楽しい日々となった。

2人で何を話していたのかは、もう何も覚えていないけれど、ゆきちゃんのことを思い出すと、心に灯(あか)りがともるような、愛しい気持ちになる。

そして、夫は、そんなゆきちゃんに、何だかとっても似ています。もしかすると、性格や、やることまでも。

そうなのです。還暦を迎える今になって、私の初恋の人は、ゆきちゃんだったのかもしれません。そう思えてならないのです。

そして、今私がそうであるように、ゆきちゃん、あなたもどうか幸せでありますように。

本当に、出会えてよかったという言葉を添えて。

松川裕子(59) 埼玉県川口市