朝晴れエッセー

長身の笑顔にエール・4月3日

ピンポーンとインターホンが鳴る。今月も、そろそろ、と思っていたがやはり新聞の集金である。

年金生活が始まってから、時間の余裕もできて紙面の中をじっくりと歩くように心がけている。そこには月3034円を払っているとの思い、そして記者がそれぞれに強い意図を持って記事をものしているはずとの思いがある。現下はまさに新型コロナウイルスが生活のあらゆる面に悪影響を与えており、オリンピック開催、経済復興をも脅(おびや)かして猛威を振るっているから、関連記事が紙面にあふれている。

さて、ピンポーンの主は、大学生のお嬢さんである。わが家に代金をとりに毎月やってくる。かれこれ3年くらいだろうか。ドアを開けると、太陽が高く昇った灼熱(しゃくねつ)の日には汗をぬぐいながら、凍(い)てつく寒い日にはマフラーをぐるぐる巻きにして、いつも穏やかに立っている。

とても長身の人で、私は見上げるようにしてお金を渡す。そのお嬢さんが「来月からは担当が替わります」と言う。私は「ああ、卒業ですか」と、そして「卒業式はあるのですか」と続けた。証書を取りに行くだけです、と言う。「うちの息子も、あの東北の大地震で、なかったのですよ」、そして「がんばってくださいね」と余計なことまでしゃべってしまう。

コロナ騒ぎで時の経過をすっかり忘れていたが、季節はもう春。その長身の笑顔は4月からの新しい職場でもきっと人気だろう。これからの長い人生に思わずエールを送ってしまった。

北見 英二 70 東京都新宿区