京産大クラスター、後手に回った空港検疫 水際対策に課題

 関西空港検疫所の担当者はこう打ち明ける。厚生労働省によると、「一時的にPCR検査対象者が急増しており、空港などで到着から入国まで数時間、結果判明まで1~2日程度待機してもらう状況が続いている」という。

 関空検疫所の職員数は約100人。検査の結果が陽性なら、医療機関への移送などの対応が必要になるが、担当者は「近隣の検疫所から応援をもらって何とかやっている。他空港や他省庁にも応援要請することも必要になりそうだ」と不安をのぞかせる。

 関西大の高鳥毛(たかとりげ)敏雄教授(公衆衛生学)によると、かつては米ニューヨークのエリス島に移民を1~2週間停留して検疫を行ったように、水際検疫は感染症対策の基本だった。近年は旅客数が膨らんだため、感染症は発生地で封じ込めることに重点が移った。

 日本では20~30年前から行政改革の一環として検疫所の人員が減らされ、代わりに国内でワクチンの開発や病院の整備などの医療態勢を拡充してきた。だが、新型コロナウイルスは発生源の中国で押さえ込めず、世界全体で死者推計2千万~5千万人に上った1918年の「スペイン風邪」を思わせる猛威を振るい始めている。

 高鳥毛教授はこうした状況を踏まえ、「水際対策の重要性を見直すべきだ」と指摘。「省庁間や自衛隊が連携して検疫所の態勢を強化する必要がある」としている。

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