新型コロナウイルス感染者の急増を受け、東京都は1日、4月から再開予定だった都立高校などについて、5月の大型連休まで休校措置を延長することを決めた。新学期の授業時間の多い貴重な1カ月をロスすることになり、学校関係者から大学受験を控える新高3生への深刻な影響を懸念する声が上がった。
「今回の休校延長の影響は、3月とは段違いに大きい」。都教委担当者は苦渋の表情で語った。
都立高校の場合、3月は試験休みなどで実質的に授業が行われていないケースが多かったのに比べ、4月は授業時間も多く予定している。延期の影響を最小限にするため、都教委では、3月の休校に引き続き課題を出し、自宅学習を中心に遅れを補うほか、学校再開後には、授業の前後や夏休みに補習授業の実施を検討している。
また、休校期間中にも民間企業が提供する通信教育を活用し、自宅学習を促す学校もある。
ただ、今後も新型コロナウイルスの感染拡大が続いた場合、休校期間がさらに延びる可能性もある。
都教委の担当者は「休校が1カ月ならまだ補習授業で対応できるが、5月以降も続いた場合、カリキュラムの見直しなど抜本的な変更が必要になるのではないか。そうなると高校や大学の試験内容にも影響しかねず、前代未聞の事態になりかねない」と語った。
文部科学省は臨時休校に関するガイドラインで、家庭学習の推進と工夫を促したが、文科省幹部は「勉強時間などには個人差があり、授業ができない状況が続けば続くほど、学習面に差がでる恐れがある。進路についての懸念も強まっているようだ」と話す。
学校現場にも動揺が広がる。ある都立高校の教諭(45)は「(5月連休明けの授業再開は)夏休みを削れば何とか大学入試に間に合うギリギリのライン。これ以上休校が長引けば、入試時期を遅らせるなどの対応が必要になるのでは」と指摘する。そのうえで、「休校中に学習から遠ざかる生徒もおり、再開後に元に戻すのは大変だろう」と懸念した。
とはいえ、感染者が急増している現状で、学校再開には大きなリスクが伴うのも事実だ。千葉大教育学部の藤川大祐教授(教育方法学)は「今は子供の安全と感染拡大の防止が最優先。本来求められている通りの教育はできない。理科の実験や体育実技などは後に回し、できることから、できる範囲で工夫してやるしかない」と話している。
■小中、運動会など行事練り直し
東京都教育委員会の休校延長決定を踏まえ、小中学校を管轄する都内の区市町村の教育委員会も始業時期や教育課程、運動会などの行事スケジュールの練り直しを余儀なくされそうだ。
多くの教委で臨時休校が始まった3月2日以降、学習面ではプリントを配布したり、文部科学省の学習サイトを活用させたりするなどの対応を行ってきた。
年度初めは新しいクラス、新しい担任のもとで新生活をスタートさせるため、この時期の休校は年度末に比べて影響が大きいとされる。年間を通じて組まれた教育課程を見直し、補習などを実施するとみられるが、夏休み期間にも影響が出る可能性がある。
都内では5月に運動会を開催する学校があり、4月から競技などの練習に取り組む。こうした準備も後ろ倒しになれば日程にも影響が出かねない。都心部では会場を借りて実施する学校もあり、会場の取り直しなどの対応も迫られそうだ。
4月6日の始業を予定してきた台東区教委の担当者は「保護者への影響が大きいため、早めに判断を行い、各学校のホームページなどを通じて情報発信していく」と説明。町田市教委の担当者は「子供たちの命を守ることを最優先に考えていく」としている。