引きこもりや不登校に悩む高校生らの居場所をつくろうと、大阪市内を拠点に活動するNPO法人「D×P(ディーピー)」が、同市城東区に「D×P図書館」を設置した。読書や自主学習ができるほか、スタッフらとの会話を通じて利用者の可能性を広げることが狙いだ。(入沢亮輔)
オフィスの一画に、支援者から寄贈された約千冊の漫画や小説、ビジネス書などが並ぶ。3月中旬、定時制高校の男子生徒が訪れた。初めての訪問といい、一人で黙々と読書していたが、「この漫画おもしろいよ」とのスタッフの一言をきっかけに、徐々にアルバイトや学校についても話が弾み始めた。
「本を読んだり人と交わったりすることで、自分たちの世界を広げてほしい」。こう話すのは、法人理事長の今井紀明さん(34)だ。図書館は趣旨に賛同した広告制作会社「ジャムストア」の協力で昨年11月から、同社事務所の一画約30平方メートルで運営する。
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今井さんは、18歳だった平成16年4月にイラクで武装勢力に拘束された経験を持つ。9日後に解放されたが、帰国後には「危険な場所へ勝手に行って自己責任だ」など激しいバッシングにさらされた。
「批判され続けて、どんどんふさぎ込んでいってしまった」。自宅に引きこもる日々を過ごした。高校時代の恩師のアドバイスもあり、20歳で大学に進学したものの引きこもりは続いたまま。周囲の支えで、日常を取り戻したのは事件から約4年後だった。
大学卒業後に一度商社に就職するも、知人の教員から通信制や定時制高校の生徒には進学や就職をしないまま卒業する生徒が多いとの現状を聞いた。
かつての自分と重なった。「周囲とのつながりをうまく持てない生徒は、誰にも相談できずに困っているはず」と、こうした生徒らのセーフティーネットを作るため、24年に「D×P」を立ち上げた。現在は、高校に出向いて生徒の話を聴く機会を設けるほか、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などを通じて全国約1400人の生徒の就職や進学の支援などを行っている。
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図書館もこうした活動の一環で開設。普段はジャムストアの社員がいるほか、今井さんらが支援者との打ち合わせに利用することもある。今井さんは「生徒はいろいろな世代の人と関わることによって、多様性や人への理解を深めることができる。僕の意図しないところで発展していけばおもしろいですね」と期待を寄せた。
開館は平日午前10時~午後5時。利用は無料。事前にジャムストア(06・6180・7024)か、D×P(info@dreampossibility.com)に申し込みが必要。