朝晴れエッセー

圧力鍋・3月30日

運が良かった。名医の知識に出合い、48歳のときから、玄米菜食にして、77歳の現在まで無病健康にて、薬の常用もない。

この玄米を炊くのに圧力鍋を使っているが、いつもありがたく思っている。

2年ほどまえ、この圧力鍋の部品がだめになった。蓋の縁の回りに輪になっているゴムパッキンが付いているが、それが切れてしまった。

二十数年も使っているので、もう寿命かなと思ったが、何とも愛着が捨てきれない。大型ホームセンターへ行き、ゴムパッキンがあるかと尋ねた。店員さんは「うちで買ったものでしたら取り寄せられるかもしれない」と言った。これはもうだめだ。二十数年も前にはこのあたりは田んぼだった。

まだ諦めきれない。町中の古い金物店へ行った。たしかここで買ったものだと思い出した。こわれたゴムパッキンをご主人に渡すと、淡々として地下の倉庫へ下りていった。ありました!

私はご主人に「よくありましたね」と言いながら、ご主人の言動を注視していたが、得意や誇りや自慢のカケラがチラッとも見えなかった。まるで古い型の圧力鍋みたいだった。

これでもう、残りの人生、この圧力鍋と死ぬまで付き合える。

感激は数日消えなかった。どうしてもこのゴムパッキンをもう1つ買いたくなって、その店に行くと、「もう無いです」と言われた。半分がっかり、半分納得。

去年の暮れ、この店はやめてしまった。

木田川玄道(77) 静岡県下田市