世界のかたち、日本のかたち

ウイルス戦争と中国の責任 大阪大教授・坂元一哉

新型コロナ対策の一環で公道と住宅を仕切るブロックが設置されたが、破壊して自宅に入ろうとする住民=3月29日、中国・武漢(ロイター)
新型コロナ対策の一環で公道と住宅を仕切るブロックが設置されたが、破壊して自宅に入ろうとする住民=3月29日、中国・武漢(ロイター)

中国武漢市で発生した新型コロナウイルスが、世界中で猛威を振るっている。今月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的な大流行)を表明してから3週間になるが、感染拡大の勢いはとどまるところを知らない。

G7(主要先進国)の首脳たちは16日、緊急のテレビ電話会議を行い、新型コロナウイルスが「地球規模の健康危機で、世界経済に重大なリスクをもたらしている」と指摘する共同声明を出している。トランプ米大統領は2日後、「世界は隠れた敵との戦争になっている」とツイートした。実際、このウイルスとの戦いはすでに「世界戦争」の様相を呈しているといっても過言ではない。

先週の時点で世界の感染者数は、分かっているだけでも60万人を超え、死者は2万人を超えた。その数は急増の一途(いっと)にある。世界各国は国境封鎖を含め、出入国管理を厳格化するとともに、国内の人の移動を制限して対応しているが、イタリアなど欧州諸国だけでなく、米国でもかなり厳しい戦いになっている。この「戦争」で世界が被(こうむ)る人的、社会経済的ダメージは巨大なものになるだろう。

他国と比べれば、日本はまだこの「戦争」に善戦しているかもしれない。だが、犠牲者は増えているし、専門家は爆発的な感染拡大の可能性を指摘する。東京都の週末外出自粛要請に見られるように、油断はできない。東京五輪の延期もあって、日本が被るダメージの大きさは見通せず、国民生活のストレスはしばらく続くだろう。

安倍晋三首相は、世界の人々の健康不安を和らげるためには、何より治療薬の開発が重要だとして、前述のG7会議で、開発協力の加速化を訴えた。この点、日本製も含めて、いくつかの薬品の有効性が伝えられているのは朗報である。

国民の経済不安について首相は、日本経済の安定のため「大胆で先例のない」経済対策を打ち出すと明言している。GDP世界3位の日本経済の安定は、「戦時下」にある世界経済の安定に欠かせない。そういう観点からも、真に思い切った強力な対策を期待したい。

世界も日本もいまは「戦争」に集中するときだが、一段落すれば、「戦後」世界のあり方を考え始めねばならないだろう。核心はヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に動くグローバリゼーションが持つリスクの再計算にある。そしてその再計算には、「戦争」の原因究明と再発防止の施策が欠かせない。

新型ウイルスを何と呼ぶかは別にして、世界的な集団感染が中国の一都市から始まったのは事実である。中国政府にはウイルス発生の原因を究明する責任がある。中国政府にはまた、情報隠蔽(いんぺい)など初動のひどい不手際が、感染の世界的拡大につながったことをどう反省し、責任をとるかを明確にしてもらわねばならない。

中国政府が2つの責任をどう果たすか。世界が「戦後」世界のあり方を決めるのは、それを見極めてからになる。(さかもと かずや)