新型コロナウイルスの感染拡大で、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪・パラリンピックの「1年程度の延期」を決めたことを受け、大会組織委員会は会場の再確保など計画の大幅な見直しを迫られるほか、国内の各競技団体では予定されていた代表選考会の中止や、選手選考の見直し議論が必至になるなど、「1年後」に向けて課題は山積している。
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≪会場≫ 民間施設 再び確保できるか
競技が行われるのは、開催都市の東京を中心に計43会場。うち25会場は既存施設を使用するため、再び会場を確保できるかが、大きな問題となる。
既存施設の中にはスポーツ専用だけでなく、「さいたまスーパーアリーナ」や「幕張メッセ」といったコンサート会場や展示場としても使われている民間施設もある。すでに大会後の使用予定が入っているものについては、調整が必須だ。
各国から集まる報道陣の拠点となるメディアセンターが置かれる「東京ビッグサイト」も、本来は頻繁に展示会や見本市が開かれる施設。すでに来夏の利用申し込みを受け付けているという。
一方、水泳などの会場として都が新たに整備した6つの施設も、大会後に再オープンする予定。再開業の時期がずれれば、維持管理費が膨らむなどの悪影響も予想される。
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≪大会組織委≫ 職員3500人 人件費さらに増
大会組織委員会の武藤敏郎事務総長が「組織としては大変重要なポイント」と認めたのが、3月1日現在で3500人を超えた職員の扱いだ。来年の大会開催時には約8千人に膨らむ見込みでもある。
組織委によると、現職員の約30%は東京都、25%はスポーツ団体と民間企業、15%は国と地方自治体からの出向者で占める。給料は出向元の負担だが、組織委は大会後の10月には千人程度まで職員を減らす方針で彼らの多くは出向元に帰る予定だった。
延期によって出向期間も延長されるかというと、そう簡単ではない。「それぞれ事情がある。喜んで(延長に)応じてくれる人もいると思うが、帰らせてくれという人もいるかもしれない」と武藤氏。2019年度の正味財産増減予算書によると、給料手当は約40億2600万円。組織委が直接雇用する職員の人件費は当然膨れ上がることになる。
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≪チケット≫ 規定なく 払い戻しなど注目
大会組織委員会がこれまでに販売したチケットは、国内向け抽選販売で五輪約448万枚、パラリンピックで約97万枚。このほかに海外の公式販売事業者や大会を協賛する旅行会社を通じ、販売されたツアーチケットなどもある。「チケット購入・利用規約」には大会の延期時についての明確な規定はなく、これらの取り扱いに注目が集まる。
武藤敏郎事務総長は「結論は出ていないが、方針としては、できるだけすでに入手された方に十分に配慮したやり方を考えていきたい」と話す。払い戻しや購入済みチケット所有者に対する優先販売などが考えられるが、現行計画と同じ会場で競技開催ができない場合は、販売可能な枚数が当初よりも少なくなるケースも考えられる。
組織委は新たな販売計画も含めて「検討の上、決まり次第ご案内する」としている。