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文部科学省は24日、令和3年度から中学校で使われる教科書の検定結果を公表した。合格した社会科の歴史教科書では、平成16年度検定以降は使われなくなっていた「従軍慰安婦」の呼称が復活。先の大戦で日本軍が「沖縄を『捨て石』にする作戦だった」などの記述もあり、一部で自虐色が強まる傾向がみられた。
検定には10教科計115点が申請され、社会科の歴史で自由社と令和書籍、技術家庭科でイスペットと教育図書が不合格になった。このうち教育図書は再申請して合格したが、自由社など3点は「欠陥箇所数が著しく多い」などとされ、年度内の再申請も認められなかった。ほかに国語など5点が申請を取り下げた。
検定意見の総数は4775件。理科2043件、技術家庭814件、数学466件の順で多かった。歴史では集団的自衛権に関し、平成26年7月に閣議決定された武力行使の新3要件を踏まえない記述に検定意見がつき、「実力で阻止する」との記述が「必要最小限の実力」などと修正された。
合格した教科書のうち領土をめぐる記述では、平成26年度の前回検定に続き、社会科の地理で全社が北方領土と竹島(島根県隠岐の島町)、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「固有の領土」と記述。公民は前回1社が尖閣諸島を扱わなかったが、今回は全社が取り上げた。いずれも地図や写真など複数の資料を使って領土意識を深める内容で、充実した記述が定着した。
一方、先の大戦をめぐる記述では、歴史で2社が慰安婦について説明。このうち新規参入の山川出版は「戦地に設けられた『慰安施設』には、朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)」と記述した。「従軍」をつけた呼称は不適切との批判が強く、現在の教科書では使われなくなっている。