ビジネス解読

「改竄できない」スマホ決済 ネパール、日本のベンチャーに白羽の矢

EXCのメリット

 房氏は、日本の電子マネー「Suica(スイカ)」の基盤技術になっている非接触型ICカード技術「Felica(フェリカ)」を開発した元ソニーの技術者、日下部進氏に協力を求めた。房氏が、中高校、大学の先輩である日下部氏を頼ったのは、「フェリカは実用化して20年以上たつが、ハッキングなどで大きな被害を受けていないから」だったという。

 そして、スマホを使ったキャッシュレス決済やデジタル通貨の基盤となる安全性の高い技術「EXC」を完成させた。

 EXCによる決済は、BCと異なり、中銀がネットワーク上のサーバーの役割を果たす。中銀と民間銀行▽民間銀行と顧客▽民間銀行とクレジットカード会社-など取引ごとに同一のプログラムを導入する手法のため、中銀が一括管理する手間を省略でき、コストも抑えられる。

 さらに、3つのデータベースでセキュリティー上の安全性を実現した。具体的には、(1)どの口座にいつお金が入り、出ていったかを記帳する「アカウントデータベース」(2)取引を時系列順に番号を振りながら記帳する「取引データベース」(3)マネーロンダリング(資金洗浄)対策のために、デジタル通貨にも紙幣のような通し番号をつけて追跡可能にする「コインデータベース」-だ。

 房氏は「量子コンピューターでも3つのデータベースの暗号を同時に解読して書き換えるのは不可能だ。BCより安全性が高い」と胸を張る。

 GVEはEXCの特許を申請し、18年に日本で成立。欧米などでも国際出願している。

 ただ、ミャンマーはイスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害問題などで混乱していたこともあり、プロジェクトは立ち消えに。

 その後、ネパールからEXCを使ったキャッシュレス決済の相談が舞い込んだのだ。国際協力機構(JICA)も資金を提供する。

 ネパール政府とGVEは22年の事業開始を目指す。決済をデジタル化できれば、デジタル通貨導入の議論も後押ししそうだ。

 房氏はこう意気込んだ。

 「新型コロナウイルスの感染拡大で多くの人が触れた現金を使いたくないという声は多く、キャッシュレス決済やデジタル通貨化の議論は深まるはずだ。EXCは遠隔治療の電子カルテにも応用できる」

(経済本部 藤原章裕)

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