朝晴れエッセー

贈る言葉・3月20日

卒業のシーズンが近づくと思い出す1人の教師がいる。長女の小学6年生のときの担任の先生だ。厳しい先生で、ほめて伸ばす教師が多いなかで短所を指摘する先生だった。忘れ物が多い、私語が多い、規則を守れない生徒には厳しく接し、机を廊下に放り出したりもした。

1学期末の三者懇談ではことごとく娘のできないことを挙げられ、「がんばろう」が3つもついた通知簿を見たときは親として複雑な思いだった。しかし、実は懇談の前に先生と娘で話す時間が設けられていて、そこでは先生は娘のことをほめてくれていたという。

「門林さんは文章を書くのがうまいから読書感想文コンクール、期待しているよ」

何か好きなことを見つけ、それを一生懸命やりなさいとも言ってくれた。先生としては中学校に上がる前にできることはしてほしいという思いがあったのだろう。

勉強も運動も苦手でおとなしい性格の娘だったが、水泳大会や合唱コンクール、マラソン大会など自分が興味を持ったことに努力をし結果を残していった。乱雑な字も習字に通い少しは読めるような字になり、苦手な算数にも取り組んだ。

そしてその経験を新聞に投稿し掲載されるたびに先生に報告した。先生は自分のことのように喜んでくれ、娘に笑顔が増えていった。

卒業式の後、先生は長渕剛の「乾杯」をギターで弾き語りしてくれた。教室には保護者は入れず先生と生徒だけの特別な時間だった。教師の一言が子供の未来を変えることだってある。

「好きなことを全力でやりなさい」。先生の言葉は今も娘の心に響いている。

門林 留理 (51) 大阪府和泉市