朝晴れエッセー

瓜二つ・3月19日

私が高校生のときである。担任から「今日はすぐに帰宅するように!」と伝えられた。家に帰ると母から「会ってもらいたい人がいるの」。

母から詳しく事情を聴くと、母は以前結婚していて、戦争が終わり復員してきた夫は病気で、ともに暮らしていける状態ではなかったという。しかし、跡継ぎの息子だけは置いていって新しくやり直すよう言われ、家を出たらしい。

その息子が結婚することになり、母にあいさつに来ることになったのである。

「あなたが、加代ちゃん?」。その兄にそう言われて出会った瞬間、私は息をのんだ。何十年も一緒に暮らしていないのに、顔も物腰も、しゃべり方も声までも、母に瓜(うり)二つだったのである。雷に打たれたような気持ちとは、こういうことかと思った。

きっと私はカチカチに固まっていたにちがいない。何という「DNA」のたまものか。泣く泣く置いてきた息子かもしれないが、お母さんと呼ぶのは私一人だと思っていたのにもう一人息子がいたことは、びっくり以外、何ものでもない。

そもそも、私は全然母に似ていなかった。「加代ちゃんのお母さんは、美人よね、でもあなたは、お父さん似ね!」。こう言われるのが常だった。

私は河原から拾われてきたのかなと思った幼少期。今こうして年齢を重ね、顔にもしわが増えてきた。決して美人ではない顔も、亡くなった母に似てきたと言われるようになった。何だかちょっと、嬉しい気持ちである。

森田加代子(68) 東京都八王子市