学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当した財務省近畿財務局の男性職員が自殺したのは、当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏らに決裁文書改竄(かいざん)を強制されたことなどが原因として、男性の妻が18日、佐川氏と国に計約1億1260万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。
職員は、近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん=当時(54)。訴状によると、平成29年2~4月ごろ、佐川氏らの指示で、国有地売却に関する決裁文書を3~4回改竄。作業に伴う長時間労働で心理的な負担が蓄積して鬱病を発症し、30年3月に自殺したと主張している。
赤木さんの自殺について近畿財務局は同年冬、公務員の労災に当たる「公務災害」と認定している。
原告側は、自殺前に赤木さんが残したという手記を公開。改竄の指示は佐川氏によるものだとし、《学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があった》などと記載されていた。さらに《役所の中の役所といわれる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる》と憤りや絶望感をつづったり、《抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか》などと、自殺に至る胸中も明かしたりしていた。
原告側は赤木さんは真相の説明を望んでいたとし、訴訟を通じて自殺の原因に加え、改竄の経緯も明らかにされるべきだと強調。提訴後、記者会見した代理人の生越(おごし)照幸弁護士は「夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています」などとする妻のコメントを読み上げた。
財務省は「お亡くなりになったことは誠に残念で、深く哀悼の意を表したい。訴訟については内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」とした。
◇
■森友学園問題 学校法人森友学園が取得し、小学校新設を計画していた大阪府豊中市の国有地が、評価額から8億円あまりを差し引いた1億3400万円で学園に売却されていたことが平成29年2月に発覚。決裁文書の改竄なども判明した。財務省は当時理財局長だった佐川宣寿氏が改竄や交渉記録廃棄の方向性を決定付けたと認定し、佐川氏を含む計20人を処分。一方、大阪地検特捜部は背任罪などで告発された佐川氏らをいずれも不起訴処分とした。