明美ちゃん基金

「手応え」でも「道半ば」支援の中心メンバーに聞いた5年の成果

【明美ちゃん基金】「手応え」でも「道半ば」支援の中心メンバーに聞いた5年の成果
【明美ちゃん基金】「手応え」でも「道半ば」支援の中心メンバーに聞いた5年の成果
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 国内外の心臓病の子供たちを救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)が2015年からミャンマーで実施してきた、子供たちの心臓病の医療支援事業が当初予定の5年を迎えた。事業は新たに2年延長し、地方にも支援の手を伸ばしていく予定だ。支援の中心にいた人々は、この5年をどう評価し、これからの2年につなげていくのか。基金とともに歩んできた国立循環器病研究センター、東京女子医大病院、NPO法人ジャパンハート、活動の拠点である国立ヤンキン子供病院の中心メンバーに聞いた。

市川肇・国立循環器病研究センター小児心臓外科部長「若い医師の成長に手応え」

 ミャンマーへの医療支援が始まる前年の2014年8月に現地を視察し、重い心臓病の子は死を待つしかなかった医療の実情を目の当たりにした。

 医療団のメンバーとしてミャンマーを訪れるたび、手術の順番が来るのを祈るように待つ子供と家族の顔を見てきた。手術を受けるということは生きるチャンスを得るということ。その子の人生は大きく変わる。

 渡航中は一例でも多く子供を手術しようとしてきたが、残念ながら早く手術さえすれば救えたはずの命も数多くあった。

 5年前と比べて状況が大きく変わったわけではない。今も心臓病の子供の9割が治療を受けられないまま亡くなっている。

 だが、希望もある。若い外科医には高いモチベーションがあり、経験を積めば積むほど技術が向上するという手応えも感じた。将来、何倍もの成果が返ってくるはずだ。

中西敏雄・東京女子医大元教授「現地医療水準、まだ8合目」

 医療団の一員として最初に国立ヤンキン子供病院を訪れた2015年9月、前月に新設されたばかりのカテーテル室でカテーテル治療の基礎中の基礎を現地医師へ伝えるところからスタートした。

 心臓病の治療にはリスクが伴う。この5年間の医療支援を振り返ると、治療した症例の全てが成功したわけではないが、難しい症例をともに乗り越えた経験が現地医師らへの最大の教育となった。

 今では医療団の渡航中、カテーテル治療はほぼ全て現地医師が行い、私たちは近くで相談に乗ったり、難症例のサポートをしたりするだけになるまで成長した。進歩は素晴らしいの一言に尽きる。

 ただ、サポートなしで全症例を行うまでには至っていない。登山に例えると8合目の段階。私たちの使命は、現地の医療関係者が自分たちの力で若い医師や看護師を育て、医療技術を自発的に発展できるよう導くこと。そのためには、もうしばらくの支援の継続が不可欠だ。

河野朋子・ジャパンハートヤンゴン事務所プロジェクトディレクター「忘れられない母親の決断」

 今も忘れられないのは、最初の渡航で医療団の医師が、4歳の男の子のエコー診断をした際、傍らで見守る母親に診断結果をこう告げた場面だ。

 「カテーテル治療の成功確率は3割。でも治療しなければあと数カ月の命です」。男児を抱え、泣きながら部屋を出ていった母親はしばらくして戻り、治療する決断をした。

 両親の気持ちを想像すると、その夜は眠ることができなかったが、翌日の治療は無事成功。同じ年代の子供を持つ親として本当にうれしかったし、改めて目の前で苦しむ子供の命を助ける大切さを痛切に感じた。

 あれから5年。400人近くのミャンマーの子供たちの命が救われたが、幸せになった人の数は、治療した人数にとどまらない。子供の両親や祖父母、兄弟らを含めると、数千人もの人の人生に影響を与えた。活動の意義の大きさを実感せずにはいられない。

ミン・ミン・カイン・国立ヤンキン子供病院院長「子供を救うため、欠かせない日本の協力」

 2015年から始まった5年間のプロジェクトで、日本の医療団はミャンマーを毎年2度訪れ、心臓病に苦しむ子供の治療にあたるとともに子供に対して医療費を支援し、ミャンマーの医師に医学知識を与え、医療トレーニングを施してくれた。さらに複数の医師が日本で先進的な医療研修を受ける機会をいただいた。

 ミャンマーの子供のために善意を寄せてくれた方々、そして、日本の医療チームに対し、感謝の気持ちをどのような言葉で表せばよいかわからないが、患者や患者家族、当院の代表として感謝申し上げる。

 ただ、統計的にミャンマーで、生まれてくる先天性心疾患の子供は約1千人。全ての命を救うのに必要な医師の数も技術も不足しているのが現状だ。治療されないまま亡くなっていく子供を救うには、より多くの若い医師や看護師を育てるしかなく、日本の医療団の協力は欠かせない。今後も、ミャンマーの医療水準の向上に力を貸していただきたい。

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