今年はいきなり中国・武漢が感染源である新型コロナウイルスの猛威に振り回されて始まった。昨年末に起きたカルロス・ゴーン日産自動車前会長の逃走劇もすぐさま隅に追いやられてしまった。どちらにしても日本にとっては笑いごとでは済まない由々しき事態なのだが、あまりに「奇想天外」な話に感覚がついていかない。記事の校閲作業をしていても、どこか小説やSFの中の出来事のような気がしてしまう。
そこで今回は「奇想天外」「SF」つながりで一つ紹介したいことがある。「2020年の挑戦」。こう書けば今なら「あー、東京オリンピック・パラリンピックのことか」と思われるだろう。実は昭和41(1966)年にテレビ放映された空想特撮ドラマ「ウルトラQ」第19話のタイトルなのだ。ざっとあらすじを書けば「何者かに撃墜される自衛隊機。突如消えた人間…と不可解なことが頻発する。まるで小説『2020年の挑戦』のようだ。それは2020年の未来のケムール星に住む500歳のケムール人と交信した内容を記したものだという…」。
ケムール人は医学の驚異的な発達のせい(?)で500歳なのだが、肉体はその分しっかりと衰えていく。それを食い止めるため、なんとも迷惑なことに地球人の若い肉体に目をつけた。とまあ、荒唐無稽だが、54年前の放映当時はそれこそ未来感が満載だった。
「2020年の挑戦」を地球人にぶつけてくるはずだった今年。異星人よりもむしろ新型コロナウイルスの「挑戦」に全人類が対峙することになってしまった。500歳になってもなお生きようとして地球人の若い肉体が欲しかったケムール人。地球人としては迷惑だが、命をつなげようとしたケムール人の「生き方」には同じ生命体として少しは共感できる。
しかし、いまだ詳しい発生経緯がわからず、治療法も確立していない新型ウイルスはまるで姿の見えない「侵略者」のようで一層不気味だ。
知りたかったことが解明されたあかつきには衝撃の事実が…みたいな荒唐無稽を超えた「シン・2020年の挑戦」の悲劇的なエンディングは見たくない。(ひ)