武漢市は12月末になって、ようやく海鮮市場を閉鎖します。ですが、ほかの対策はほとんどとりませんでした。やったこととい
えば、武漢市の警察が「肺炎がはやっている」という情報をインターネットに流した者の摘発でした。
2020年1月1日、市の公安当局は「インターネット上に事実でない情報を公表し、転載した」として、医療関係者8人を処罰したと明らかにします。8人は呼びつけられ、長時間の取り調べを受け、反省文を書かされました。厳重注意されたのち、釈放はされましたが、その際、メディアに「デマを広め、秩序を乱す行為は許されない」と声明を出しました。「病気のことをインターネットに書くと犯罪者にされてしまう」。こうした恐怖心が武漢市民に植え付けられることになりました。
こうした光景からは、政府や官憲の動きをチェックし、批判するメディアの存在がいかに大きいかということを考えさせられます。日本のメディアにも問題はあるでしょう。それでも中国の当局者が「問題を解決せずに問題を提起した人を処罰する」ような「住民目線なきやり方」に明け暮れるのはなぜか。それは、中国では当局の横暴や至らない点を批判的に論評し、監視するメディアが全く存在しないからだと思うのです。
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「正論」4月号 主な内容
【特集 中国という禍】
情報隠蔽・操作を見破れなかった日本 評論家 石平
習近平が重視する「人民より国家体面」 産経新聞外信部次長 矢板明夫
「第二の武漢」を作らないために 安全保障問題・危機管理専門家 古川勝久
官僚の都合より国民の命守る議論を 医療ガバナンス研究所理事長 上昌広
憲法改正も視野に緊急事態に備えよ 国士舘大学特任教授 百地章
感染症対策は安全保障問題だ 元海上保安官 一色正春
武漢ウイルス禍対応の「本質」 東洋学園大学教授 櫻田淳