【シンガポール=森浩】米国とアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの和平合意を受け、10日から始まる予定だったアフガン政府とタリバンの停戦に向けた協議は、開催が見送られた。ガニ大統領がタリバン捕虜5千人の解放を渋ったことに加え、政争による混乱が影を落とした。和平合意の進展は、出だしでつまずいた格好だ。
2月29日の米国とタリバンの和平合意は、政府とタリバンの双方が捕虜を解放した上で協議に入る内容だった。だが、ガニ氏が「密室で決められた」として捕虜解放に難色を示し、タリバン側が態度を硬化させていた。ガニ氏は、捕虜解放でタリバンが活性化することを警戒したもようだ。
ガニ氏は10日、捕虜1500人を14日から段階的に解放し、残りはタリバン側の対応を見て判断するとの妥協案も示していた。
しかし、タリバン幹部は11日、捕虜5千人が解放されるまで政府との対話に応じないと明言するなど、協議開始へのハードルはなお高いままとなっている。
しかも、第1期ガニ政権でナンバー2の行政長官を務め、大統領選(昨年9月投票)の結果に反発するアブドラ氏は9日、ガニ氏とは別に大統領就任を宣言している。ガニ氏を支持する米国は「2つの政権を望まない」(ポンペオ国務長官)と懸念するが、対立の解消にはなお時間がかかりそうな情勢だ。
この政争の影響で、政府はタリバンとの協議に臨む代表団の選出すらできていない。アブドラ氏側も同代表団にメンバーを送り込む意向を表明している。混成チームが結成されたとしても、内部対立は必至だ。
アフガンの地元ジャーナリストは「国内にはアブドラ氏の支持者も多い。いま政府は一丸となってタリバンと交渉できる状況ではない」と分析している。