東日本大震災

「パパは私に似ているって教えたいな」 天国の父に届ける詩 奥田梨智さん

《パパ あのね

つなみのときは

ママと

ママのおなかのなかのわたしを

まもってくれてありがとう

パパ あのね

パパがてんごくにいったあと

七月十二日に

わたしが生まれたよ》

宮城県登米市の小学2年生、奥田梨智(りさと)さん(8)は、東日本大震災で亡くなった父、智史さん=当時(23)=を思い、「あいたいよ パパ」という詩を書いた。

9年前の平成23年3月5日、智史さんと江利香さん(36)は石巻市で結婚式を挙げた。智史さんの出身地で、職場がある石巻市で新居を構える予定だった。

「一生幸せにする」

友達から4年半の交際期間を経て、智史さんからのプロポーズを受けた江利香さん。幸せの絶頂だった。

婚姻届を提出した3月11日。震災と津波が石巻市を襲った。智史さんとは2日間連絡がつかなかったが、大丈夫だと思っていた。しかし、智史さんは帰らぬ人となった。信じることができなかった。

江利香さんは当時妊娠6カ月。智史さんの実家も無くなり、登米市の実家に戻った。失意の中だったが、実家の両親と、当時、小学生だった長女(16)の励ましを受けて、7月12日に、梨智さんを出産した。

「子供ができたことが分かったときが一番幸せだった。優しくて楽しくて、毎日が本当に楽しかった」と江利香さん。

智史さんと、同じく津波の犠牲になった智史さんの妹、梨吏佳(りりか)さんから、一文字ずつもらって、命名した。梨智さんのくりっとした目と活発な性格は、智史さんにそっくりだという。江利香さんは梨智さんに父親の写真を見せながら、思い出話をするのが日課になっている。

「ご飯を食べているときに飲み物がないと食べられないところとか、運動とゲームが大好きなところとか。パパと梨智は性格もそっくりなんだって」と梨智さんは話す。

小学校1年生の夏休み。担任の先生のすすめで父親への思いを詩につづった。

梨智さんは「パパに知ってもらいたいこと、パパに会いたいことを書いた」という。その詩は仙台市主催の小学生を対象とした詩のコンクールで「晩翠わかば賞」に輝いた。

梨智さんは毎日、智史さんに一日の出来事を報告している。いま一番知ってもらいたいことがある。

「パパは私に似ているっていうことを知ってる? 教えたいな」(大渡美咲)

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