肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、在宅勤務の導入が進んでいる。全国の小中高校も多くが一斉休校になっており、家族と自宅で過ごす時間が増えている。市民に向けて感染予防ハンドブックを公表した東北医科薬科大の賀来満夫特任教授に、家庭での対策を聞いた。(油原聡子)
かからない、うつさない
新型コロナウイルスの主な感染経路は2つ。くしゃみやつばなどの飛沫(ひまつ)に含まれたウイルスを口や鼻から吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手指で鼻や口、目に触れることで粘膜などを通じて体内に入る「接触感染」だ。
賀来教授は「かからない、うつさないためには、複数の対策を組み合わせ、リスクを下げるのが基本」と話す。
家に感染症を持ち込まないために重要なのが手洗いだ。外出先から戻ったら、流水とせっけんで手を洗うか、アルコールで手指を消毒する。多くの人が触れたものを触ったときや、料理を作る前などが手洗いのタイミングだ。
幼くて、うまく手洗いができない子供には、アルコールを含んだウエットティッシュで、両手をすみずみまで拭いてあげるとよい。
また、部屋のドアノブや照明のスイッチ、リモコンなど、家族がよく触れるものも消毒する。「手で顔を触るのは癖なのでなかなか防げない。だからこそ、手洗いや消毒をしっかりしてほしい」と賀来教授は説明する。
看病する人は1人に限定
家族に症状が出たら、できれば部屋を分け、なるべく看病する人は1人に限定する。食事では、食器の共用は避ける。「使用後の食器は消毒液に5分以上浸した後に洗えばその後、ほかの人が使用することはできます」という。
衣類や寝具は、下痢や嘔吐(おうと)などによって体液がついている可能性がある。そういった場合には、80度の熱湯で10分以上消毒してから、通常の洗濯を行う。
ごみを捨てるときにも注意が必要だ。発症した人が使ったティッシュペーパーなどを捨てるときは、直接手で触れないようにする。ビニール袋を入れたごみ箱を用意しておくと便利だ。
予防の理由も伝えて
同居する家族や重症化しやすい高齢者にうつさないためにも、子供も感染予防について理解しておく必要がある。
賀来教授は「なぜ外から戻ったら手洗いが必要なのか、など具体的に説明することが重要」と話す。たとえば、カラオケルームは密室で過ごすことになり、口元に近づけたマイクには飛沫がつきやすい。ゲームセンターにあるゲーム機のレバーは大勢の人が触れる。公園の遊具はたくさんの人が利用する。
国内では感染者から家族にうつる例も報告されている。賀来教授は「感染しているのに症状が出ないケースも報告されている。家族に症状が出ている人がいなくても、しっかりと対策してほしい」と訴えている。
◇
賀来教授が監修した市民向けのハンドブックは、東北医科薬科大のホームページで公開されている。