深刻な人手不足に対応するため小売業や飲食業で、レジのセルフ化が進むなか、スーパーマーケットは少し様相が異なる。店員が商品バーコードを読み込むが、支払いは利用客が精算機で行う「セミセルフレジ」が浸透しているのだ。すべてを利用客で完結させる完全セルフレジもスーパー向けにあるが、なぜ、店員が必要なセミセルフレジの方が広がるのだろうか。
半数以上が導入
福井市のショッピングセンターに入るスーパー「アル・プラザベル」は昨年11月、セミセルフレジを導入した。11カ所あるレジカウンターのうち8カ所を切り替え、精算機12台を設置している。
混み合う平日夕方でレジ担当は8人必要だった。セミセルフレジ導入で7人に抑えられたといい、久津見崇食品店長は「レジ担当の1人を他に回せることは仕事の効率化に大きい」と話す。
一方、約10店でセミセルフレジを入れた別の地方スーパー関係者は「従業員の負担が軽減され、レジ担当者を採用しやすくなった」と明かす。レジを担当する従業員にとって大きな気がかりは、お釣りを渡す際などに過不足が生じる精算ミス。セミセルフレジの導入で従業員が現金を直接扱わなくなるため、担当者の心理的負担が減るというわけだ。
ただ、省人化や現金を扱わないメリットは完全セルフレジも同じはず。それなのに、スーパーではセミセルフレジが圧倒的に普及している。
スーパー業界3団体がまとめた昨年の「スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、セミセルフレジ導入店は推計で57・9%を占め、前年から9ポイント伸びた一方、完全セルフレジは11・4%で前年から0・2ポイント減少しているという。
ICタグではだめなのか
完全セルフレジが伸び悩む要因には、利用客の利便性が関係しているようだ。
完全セルフレジでバーコードを読み取る作業は利用客、特に高齢者にとっては煩雑で、慣れるまで時間がかかる。スーパーの場合、タイムセールの商品にバーコードが重ねて貼られていて注意が必要なこともあり、完全セルフレジを避ける利用客がいるという。
ハード面の課題もある。