マレーシア新首相にムヒディン氏就任 前首相、不信任案提出へ

 【シンガポール=森浩】政界の混乱が続いていたマレーシアで1日、首相就任の宣誓式が行われ、野党連合が推すムヒディン元副首相(72)が第8代首相に就任した。マハティール前首相(94)は辞任後に政界再編を促し、自身の続投を狙ったが不発に終わった格好だ。ただ、マハティール氏は新首相に不信任案を提出する構えで、政界が落ち着きを取り戻すかは不透明だ。

 混乱の発端は2月24日、マハティール氏自身が約束していたアンワル元副首相(72)への首相職禅譲をめぐり、与党連合「希望連盟」が分裂した責任を取って辞任したことだ。

 しかし、マハティール氏の26日のテレビ演説で「許されるのであれば、どの政党にも傾かない政権を持ちたい」と述べ、一転して続投に意欲を示した。マハティール氏には、わだかまりがあるアンワル氏への禅譲を回避した上で、自らを支持する勢力を結集し、権力基盤を強化する思惑があったようだ。突然の動きに反発も起きたが、希望連盟は最終的にマハティール氏を首相候補に推すことを決めた。

 対抗馬として急速に支持を集めたのが、マハティール氏の側近で内相も務めたムヒディン氏だ。マハティール氏に近い一方、野党側にもパイプを持つ。最大野党「統一マレー国民組織(UMNO)」を軸とする野党連合が首相候補として白羽の矢を立て、本人も首相就任に意欲を見せた。

 両陣営の多数派工作が続く中、解散総選挙も選択肢に上がったが、最終的に国王が次期首相を任命することが決定。マレーシア憲法は国王が「下院で過半数(112議席)の支持を獲得していると判断する議員を首相に任命できる」と定める。国王は29日に「ムヒディン氏が優勢と判断した」と宣言し、首相に任命することを発表した。

 国王は「与野党幹部への意見の聞き取りの結果、決めた」と説明したが、両者を支持する議員の数は流動的でムヒディン氏を選んだ決め手は不明だ。決定にマハティール氏は強く反発しており、自身を「支持する議員は(下院の半数を超える)114人に達している」と主張。9日から開かれる予定の国会で新首相への不信任案を提出する構えだ。

 混乱の中で誕生したムヒディン新首相は、議員による多数派工作の産物といえ、国民の幅広い支持が得られるかは不透明だ。UMNOには巨額の汚職事件で訴追され、金権政治が批判されたナジブ元首相が所属する。2018年の総選挙ではナジブ氏への反発から希望連盟が勝利した経緯もあり、新内閣でUMNOが政権入りする場合、国民の反発を招く恐れがある。

 マレーシアは、新型コロナウイルス拡大の影響で観光業を中心に打撃を受け、今年の国内総生産(GDP)成長率は19年の4・3%から1ポイントほど下がるとの試算もある。国内では政界の混乱によって、新型ウイルス対策が後手に回ることが懸念されている。

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