手塚治虫直筆の天井板、豊島区に贈呈 「トキワ荘の歴史の証し」

 漫画の巨匠たちがかつて暮らした2階建てアパート「トキワ荘」(現・豊島区南長崎)の解体時に、手塚治虫(おさむ)が自身の作品のキャラクターなどを描いて若手記者たちに贈った天井板が26日、豊島区に贈呈された。区は、3月22日にオープンする復元施設「トキワ荘マンガミュージアム」での公開を検討。数少ないトキワ荘の貴重な史料として、展示の目玉にしたいという。(松崎翼)

 手塚や石森(後の石ノ森)章太郎、赤塚不二夫ら昭和時代を代表する漫画家が青春時代を過ごし、「漫画の梁山泊(りょうざんぱく)」とも呼ばれたトキワ荘は、昭和57年に老朽化で解体された。解体現場を訪れた手塚が2階の部屋の天井の一部を取り外して即席で絵を描き、同区の警視庁池袋署の5方面記者クラブに在籍していた記者たちに贈った。

 天井板は縦約90センチ、横約30センチ。漫画作りに励む若き日の自身の姿や、代表作「リボンの騎士」の主人公サファイアが描かれ、「五方面記者クラブのみなさんへ」と書き添えられている。

 当時5方面を担当していた元産経新聞記者の安藤徹さんによると、解体現場に駆け付けた記者が5方面記者クラブについて「呉越同舟で、みんな集まって記者としてしのぎを削り合っているんです」と手塚に説明すると、「トキワ荘と同じだね」と笑顔で応えたという。天井板は代々、保管されてきた。

 この日の贈呈式では、当時5方面記者クラブに常駐していた産経新聞など7社の代表者らが出席し、天井板が同区の高野之夫区長に手渡された。

 トキワ荘マンガミュージアムは来月22日にオープンする。外観はもとより、玄関や2階の居室、共同炊事場などを忠実に再現しており、1階には企画展示室などを整備している。

 区は施設を「マンガの聖地」としての発信拠点にしたい考えで、天井板の展示を早急に検討するとしている。高野区長は「トキワ荘で残っているものは何一つなかった。天井板は手塚先生の当時の思いが込められた大切な作品で、貴重な歴史の証し。多くの人に見てもらいたい」と笑顔をのぞかせた。