猫がのびのび暮らせる家に住みたい-。飼われる猫が増えつつあるなか、猫との共生住宅が注目を集めている。猫専用の通り道を作ったり、トイレ置き場を設けたり…。猫も人も心地よく過ごせる空間が求められているようだ。(油原聡子)
猫の健康に配慮
壁に設けられたステップ、洗面室には専用の小さな入り口-。2匹の猫が1LDKの部屋を駆け回る。
東京都の看護師、沼田理恵子さん(46)は、猫と人が暮らしやすいようにリノベーションした部屋に住んでいる。
以前は賃貸アパートで雄猫を飼育。もう1匹飼おうと考えたが、多頭飼育はできない契約だった。引っ越しを決めたが、賃貸で探しても多頭飼育できて条件のよい物件がなかった。
家を探すうちに沼田さんが出会ったのが、不動産・リノベーション会社のグローバルベイスが提案する、動物病院の院長が監修するリノベーショプラン「マイリノペットforねこ」だ。猫の健康に配慮した部屋を作るのが特徴だ。
沼田さんは、職場近くに多頭飼育可能なマンションを見つけ、一室を購入。壁にステップを付けるなどして、猫が運動できるように工夫した。洗面台下には猫用トイレを置けるスペースを設け、床面には汚れに強いタイルを利用した。
一方、クローゼットのある部屋は猫が入れないスペースとしても使用できる。玄関近くには、自転車も置ける広さの土間を設けた。「猫のための家を作るうちに私も暮らしやすい家ができた。猫が2匹で遊んでいる姿を見るのは飽きないです」と沼田さん。
飼育可能な物件増加
一般社団法人ペットフード協会の「令和元年全国犬猫飼育実態調査」によると、猫の飼育頭数は推計977万8千頭で犬を上回る。犬の飼育頭数は減少する一方、猫は緩やかな増加傾向にあるという。
猫が飼育できる賃貸住宅も増えている。不動産情報サービスのアットホームによると、東京23区内の賃貸住宅で猫飼育が可能な物件は、平成26年は3%前後だったのが、昨年は4%前後と増加。調査データの分析を担当する磐前淳子さんは「空室率対策のひとつとして、猫飼育可能な物件が選ばれているのかもしれません」と指摘する。