相模原殺傷来月判決 長男に重度知的障害の小林順子さん「話せぬ息子、人として尊敬」

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判はついに結審し、3月16日に判決が言い渡される見通しとなった。そこで、公判の中でも差別的な発言を続けた植松被告の姿勢や障害者をめぐる社会情勢などについて、長男に重度の知的障害がある横浜市の小林順子さん(51)に話を聞いた。

 長男の将(20)は最重度の知的障害と自閉症で、言葉が話せません。診断は3歳の時。医師は「一生、オムツをつけることになる。話すのも無理だろう」と、彼ができないことばかりを挙げて説明しました。小学生になると、自分の頭を殴る、壁に頭を打ち付けるなどの自傷行為が始まり、よく泣いていました。

 ◆「だめな親だから」

 昔は「こんなふうに産んでごめん」「将がいろいろできるようにならないのは、私がだめな親だからだ」と思っていました。今考えると、私の中にも優生思想があったのかもしれません。変わったきっかけは、私が一時ストレスで声が出なくなったことです。意思を伝えられないもどかしさを実感し、「諦めずに生きている将は何てすごいんだろう」と驚きました。人として尊敬しています。

 27年、私は乳がんと宣告されました。抗がん剤治療を受けていた頃、将との散歩中に疲れた様子を見せると、彼が私の手を握り、自分の腕に絡めてくれました。昔は私の後ろにくっついていたのに…。改めて「もっと彼と生きたい」と思うようになりました。

 ◆施設の課題考えて

 相模原の事件が起きたときは、植松被告への怒りしかありませんでした。ただ今は、これを機に施設の課題についても考えてほしいと思っています。

 被告は裁判で、施設は障害者を人として扱っていないと思ったと述べました。私が約10年前に見学した入所施設でも、職員がみそ汁、ご飯、ハンバーグ、薬を同じ器に混ぜ、利用者の口に流し込むように食べさせていました。

 事情があるのかもしれないし、被告の話もどこまで本当か分かりません。でも私は、将を安心して任せられる施設に出合えていません。私たち親がいなくなった後、尊厳を保って生きていけるのか。一番心配な点です。

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【用語解説】相模原殺傷事件

 平成28年7月26日未明、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者の男女19人が刃物で刺されて死亡、職員2人を含む26人が重軽傷を負った。殺人罪などで元職員、植松聖被告が起訴された。事件前、襲撃を予告した手紙を衆院議長公邸に持参し、園を退職して措置入院していたことが判明。公判では起訴内容を認め、弁護側は大麻の影響で心神喪失状態だったとして無罪を主張した。事件があった居住棟は建て替え工事が進み、令和3年度中に新施設が開設予定。

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