それから『ウォーキング・デッド』というアメリカの人気テレビドラマのシリーズ。抜群に面白い。ゾンビものだから主人公の仲間たちが次々と死んでいく。そして何シーズンも見進めていくうち、ある仲間がとても残酷な殺され方をする。あまりにひどい死に方なので胸がつまる。殺した敵役への憎しみが増し、主人公たちにますます感情移入する。
長いドラマシリーズだから、見ている側は自分のことのように主人公たちに親しみを覚えている。そこへ、これでもかというくらいに残酷な殺され方。何もそこまでリアルに描かなくても、というような描写。ずいぶんな刺激だ。感情移入したからこそ「ドラマの登場人物とはいえ、人が死ぬのをこんなに楽しんでてよいのか」と怖くなった。
あとは20年前くらいに話題を呼んだラブコメディーの映画。面白かったんだけど、その中で主人公の女の子が酔っ払って吐いてしまう。その吐いたものを、ずいぶんリアルに作ってあった。ギャグとしての刺激を求めたんだろうけど、妙に印象に残ってしまった。あの映画を思い出すときは、タイトルや内容より先に、その場面を思い出してしまう。
『パラサイト 半地下の家族』は現実的な問題を扱った物語だからこそ、映画として面白くするには、より多くの刺激が必要だったのかもしれない。またそれでこそ世界の人々にも認められ、いろんな映画賞を総なめにすることができたのだろう。
刺激というのは、お寿司でいえばワサビだろうか。あとになって「あの時のワサビは辛かったなあ」と、おいしさよりも先に辛さだけを思い出すのは、ワサビが多かったからなのか、それとも私の味覚が子供だからなのか。今回のカンヌとアカデミーの二冠に輝いた映画はどうだったか。もうしばらく時間をおいて、思い出してみたい。