主張

大型船の乗客死亡 検査態勢の拡充が急務だ

 新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で、ウイルスに感染し入院、治療を受けていた80歳代の日本人男女2人が亡くなった。

 感染拡大を食い止めるためにクルーズ船にとどまってくれた乗客の中から死者が出てしまったことは極めて残念である。心から冥福を祈りたい。

 クルーズ船には待機を続けている乗客がいる。19日からは乗客の下船が始まっているが、下船した人たちも不安を抱えている。乗客、乗員と元乗客のケアに万全を期さなければならない。

 厚生労働省によると、死亡した2人は神奈川県の男性と東京都の女性で、発熱などの症状で男性は今月11日、女性は12日に入院し、ウイルス陽性が確認された。男性は狭心症などの持病があった。

 厚労省は、ウイルス陰性が確認された乗客についての再検査を実施していないが、乗客からは「下船前に再検査をしてほしい」と強く望む声があがっている。

 国立感染症研究所は、乗客の感染の多くは客室待機が始まる今月5日より前に起きたが、待機後も船内感染が広がった可能性があると分析している。クルーズ船の乗客・乗員約3700人のうち、感染者は600人を超え、10日以降は乗員の発症が増加している。

 検査後も客室に残っていた乗客が不安を感じるのは当然だ。二次感染を防ぐためにも、下船後に家族や地域の人たちと接する際の不安を取り除くためにも、ウイルス検査は不可欠である。

 厚労省は検査態勢の拡充に最優先で取り組み、最も具体的な不安に直面している乗客、下船対象者の全員検査を行うべきである。

 さらに、クルーズ船内で事務業務に携わった厚労省と内閣官房職員が感染したことも、新たに判明した。船内の感染防止態勢を見直し、安全対策を強化、徹底する必要がある。

 新型コロナウイルスは、症状のない感染者からも広がる可能性がある。市中感染を最小限に抑えるために全国規模で検査態勢の拡充が求められる。

 感染ピークを低く短くするために、国民一人一人も手洗いと「せきエチケット」を徹底し、人混みを避けるよう心掛けたい。自分と重症化リスクの大きい高齢者らの命を守ることになる。

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