「欠陥著しく多い」と指摘され、つくる会中学歴史教科書が検定不合格 撤回を要求

 来年度に採択される中学校の教科書検定(令和3年度使用)をめぐり、「新しい歴史教科書をつくる会」(高池勝彦会長)は21日、同会が推進する「新しい歴史教科書」(自由社)が文部科学省の検定で不合格になり、採択できなくなったと発表した。平成28年に改定された審査基準により「欠陥が著しく多い」と指摘されたという。つくる会は「初めから落とす意図を持っていたと断じざるを得ない」と強く反発。文科省に対し検定結果の撤回を求めている。

 つくる会によると、新しい歴史教科書に付けられた検定意見で「欠陥箇所」と指摘されたのは405件。誤記や事実の間違いなどは比較的少なく、7割以上にあたる292件が「生徒に理解しがたい」「誤解するおそれがある」などの理由だった。

 政治色をうかがわせるような指摘もあったといい、「中華人民共和国(共産党政権)成立」とする記述にも、カッコ内の共産党政権の語句に「誤解するおそれ」との検定意見が付いた。また、前回の検定で合格した記述なのに、欠陥とされたケースもあった。

 自由社版の新しい歴史教科書は平成20年度以降、過去3回の検定を通過している。26年度の前回検定でも不合格になったが、再申請して合格した。しかし28年、「欠陥箇所数が著しく多い(ページ数の1・2倍以上)」場合は年度内に再申請できないと審査基準が改められ、約1・3倍の指摘があったため「一発不合格」となった。

 同教科書の採択率は現状で1%以下だが、採択できなくなるのは今回が初めて。つくる会の高池会長は21日、「(今回の検定は)初めに結論ありきの異常なもので、容認できない」と強く批判した。

 一方、文科省では「検定中にその内容を公表するのは禁止されている。つくる会はルールに違反しており、これから対応を検討したい」としている。

 教科書検定 教科書会社が編集した原稿段階の教科書を文部科学省が審査する制度。小・中・高校ごとにおおむね4年に1度行われ(1)学習指導要領に則しているか(2)範囲や表現は適切か-などを、文科省の教科書調査官が調査した後、さらに文科相の諮問機関である教科書検定調査審議会が審査する。不適切な記述などには検定意見が付く。審議会の委員は大学教授や小中高校の教員らが務め、審査に合格しないと教科書として認められない。

 新しい歴史教科書をつくる会 自虐史観を排し、日本に誇りが持てる教科書で学べるようにすることを目的とし、藤岡信勝・東京大教授(当時)らが平成9年に設立。メンバーらが執筆陣となった扶桑社発行の歴史・公民教科書は13年の検定に初めて合格した。だが、編集方針の対立から18年にメンバーが分裂。つくる会のメンバーらが自由社の教科書を、新たに発足した「日本教育再生機構」のメンバーらが扶桑社やそれを継承した育鵬社の教科書を、それぞれ執筆した。つくる会が推進する教科書は、自由社で過去3回、扶桑社時代も含めれば過去5回、検定に合格している。

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