国の特別天然記念物、コウノトリの野生復帰を豊岡市で成功させた県は、8千キロ以上離れた東欧のセルビアで、ヨーロッパコウノトリ(シュバシコウ)の生息環境を再生させるプロジェクトに乗り出す。現地ではコソボ紛争の爪痕が、今も環境汚染を引き起こしており、県は地元機関と連携しつつ、海外でもコウノトリが舞う自然をよみがえらせたいと願っている。
プロジェクトは今月からの3カ年計画で、首都ベオグラードに隣接したパンチェボ市で進められる。同市では1999年のコソボ紛争に伴う空爆で化学工場が破壊され、毒性の強い物質が流出。土壌や地下水が汚染され市民生活に深刻な影響をもたらした。
紛争終結後の2014年から3年間、県環境研究センターではJICA(国際協力機構)とともに、現地の残留性有機汚染物質の分析を手がける人材育成を進めた。こうした縁を背景に県は今回、かつて多くのコウノトリが羽を休めたパンチェボ市内のポニャビッツァ自然公園(約194ヘクタール)に着目。コウノトリの飛来が激減した環境を改善させる取り組みを始める。
今月20、21日には現地でシンポジウムが開かれる予定で、県からはコウノトリの保護、増殖に努める豊岡市と県立コウノトリの郷公園の担当者も参加。年に3回、専門家チームを現地に派遣するほか、同市から研修生を受け入れてリーダーを育成し、環境再生のための技術移転を図る。
同センターの中野武参与は「産官学民協働で知恵を出し合い、現地の若者らが自立して環境改善に取り組めるようにしたい」。郷公園主任研究員で県立大の出口智広准教授は「現地を観察した上で、これまでの実績をもとにした計画を立案したい」と話している。(河合洋成)